送電線の火災事故を検証、ケーブルの油圧が事故前に低下電力供給サービス(1/3 ページ)

東京電力の地下送電線で10月12日に発生した火災事故について、内部の委員会が原因と対策を検証した。火災が発生した場所を通るケーブルのうち、1本の油圧が事故前に低下していた。東京電力は事故区間のケーブルを2019年度までに張り替える一方、同じタイプのケーブルすべてに防災対策を施す。

» 2016年11月10日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 東京の都心部に大規模な停電をもたらした火災事故は、電力会社の送電設備の脆弱さを浮き彫りにした。事故が発生した場所は埼玉県・新座市の地下にある「新座洞道(にいざとうどう)」で、送電線の保守作業のために設けたトンネルである(図1)。

図1 火災が発生した洞道(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力パワーグリッド

 この洞道には3本のケーブルで構成する送電線が合計6ライン通っている。都心部に電力を供給する2カ所の変電所まで延びていて、3ラインは「城北線」で豊島変電所へ、残り3ラインは「北武蔵野線」で練馬変電所へつながる(図2)。そのうちの城北線3番で14時49分に事故が起こった。

図2 火災事故の発生状況(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力パワーグリッド

 9分後に火災警報を受けて消防と警察が出動する中、40分後には城北線3番の下を通る北武蔵野線1番でも事故が発生した(図3)。その後に相次いで各ラインに事故が発生した結果、2カ所の変電所と周辺の変電所を巻き込んで大規模な停電を引き起こしてしまった。

図3 事故当日の経過。出典:東京電力パワーグリッド

 最初に停電が発生した練馬変電所の管内では約37万軒が影響を受け、8分間にわたって電力の供給が止まった(図4)。続いて豊島変電所の管内でも約22万軒に10分間の停電が発生した。2カ所の変電所ともに別の送電ルートに切り替えて電力の供給を再開したが、一部の配電線では約1時間も停電が続いて復旧が遅れた地域もある。

図4 停電の発生状況(画像をクリックすると拡大)。出典:東京電力パワーグリッド
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