日本最大の営農型メガソーラーで植物を栽培、拡大する小水力発電に光と影エネルギー列島2016年版(31)鳥取(3/4 ページ)

» 2016年11月22日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

落差の大きい小水力発電所が相次いで稼働

 鳥取県では日本海に近い地域を中心に太陽光発電の取り組みが広がってきた(図7)。加えて風力発電とバイオマス発電も沿岸地域に多く見られる。一方で山に囲まれた内陸部では水力発電が活発だ。

図7 鳥取県の主な再生可能エネルギーの発電設備(画像をクリックすると拡大)。出典:鳥取県生活環境部

 地域の資源を活用して再生可能エネルギーに取り組む県の企業局は、現時点で8カ所の太陽光発電所、1カ所の風力発電所、11カ所の水力発電所を運転中だ。水力発電所のうち2カ所は2016年に入って稼働した新しい小水力発電所である。

 1カ所目は岡山県と広島県に接する日南町を流れる川を利用した「若松川小水力発電所」で、2016年3月に運転を開始した(図8)。川の上流には滝があって、そこから少し下った場所に取水用の堰堤(えんてい)を設けている。

図8 「若松川小水力発電所」の建屋。出典:鳥取県企業局

 取水した地点から発電所までの約1キロメートルを水圧管路でつないで発電所に水を送り込む。この間の水流の落差は90メートルに達して、最大で150kW(キロワット)の電力を作ることができる(図9)。水車発電機には大きな落差を生かせる横軸フランシス水車を採用した。

図9 小水力発電の実施イメージ(上)、取水設備(左下)と水車発電機(右下)。出典:鳥取県企業局

 年間の発電量は90万kWhを見込み、一般家庭で250世帯分の電力になる。固定価格買取制度で売電して年間に3000万円の収入を得られる。買取期間の20年間の累計で6億円の収入になる一方、建設にかかった事業費は4億3000万円である。毎年の運転維持費を加えても採算をとれる想定だ。

 2カ所目の小水力発電所は南東部の智頭町(ちづちょう)で2016年9月に運転を開始したばかりの「横瀬川小水力発電所」である(図10)。この発電所も川に面して建屋があって、上流から取り込んだ水で発電する。建屋の外壁には地元の「智頭杉」を使って景観に配慮した。

図10 「横瀬川小水力発電所」の建屋。出典:鳥取県企業局

 取水口から発電所まで880メートルの距離を水圧管路でつないでいる(図11)。1カ所目の若松川小水力発電所と比べると、水流の落差は54メートルで6割程度にとどまるものの、利用できる水量が2倍以上あるため、発電能力は198kWになっている。水車発電機は同じタイプの横軸フランシス水車を設置した。

図11 水圧管路(左上、埋め戻し前)、取水設備(右上)、水車発電機(左下)、水車内の水の流れ(右下、下流側から見た状態)。出典:鳥取県企業局

 年間の発電量は150万kWhを見込んでいて、410世帯分の電力を供給できる。固定価格買取制度で売電して年間に5000万円の収入になる。20年間に得られる10億円の想定収入に対して、事業費は半分強の5億3000万円で収まった。

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