下水熱利用に新ジャンル、消毒槽の熱で空調を省エネに:自然エネルギー(2/2 ページ)
実証では下水熱利用ヒートポンプの性能評価と、熱回収性能の向上に向けた検討評価を行う。実証は2018年3月末まで実施する予定だ。積水化学によると、下水と気温との差の熱エネルギーを冷暖房や給湯などに利用すると、通常の空気熱源ヒートポンプシステムと比較して約20〜30%の省エネおよびCO2排出削減効果が期待できるとしている。
滋賀県全体でも、こうした下水熱の有効活用に向けた取り組みを推進している。琵琶湖から多く下水道が広がっており、熱源として高いポテンシャルが期待できるからだ。2016年3月には民間事業者などの下水熱の導入検討を支援するために、下水熱の賦存量やマンホールなどの位置を示した「琵琶湖流域下水道 下水熱ポテンシャルマップ」を公表している。このポテンシャルマップによると、今回の実証を行う大津市付近の下水道では、冬季でも1日当たり10〜50万メガジュール(MJ)のポテンシャルが見込めるとしている(図4)。
図4 大津市が位置する湖西地区における下水熱のポテンシャルマップ(クリックで拡大)出典:滋賀県
大津市、積水化学、関西電力の3者はこうした下水熱の有効利用に向けて、共同研究体制も構築。下水熱利用の可能性調査や事業スキーム、料金設定などのありかたについても検討を進めていく予定だ。今回の実証事業はこうした取り組みの一環となる。共同研究についても、実証と同様に2018年3月末まで取り組む予定だ。
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気温が低下する冬季でも、地下を流れる下水は一定以上の温度を維持している。滋賀県はこうした下水の持つ熱を工場などの産業用施設の省エネに活用する研究を開始した。滋賀県、関西電力、積水化学工業、日水コンが共同で行うもので、産業用施設を対象に、流域下水道管路の下水熱の活用を目指す官民共同研究は全国初の事例になるという。
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