国の管理下から脱却を目指す東京電力は、2022年度までの特別事業計画で進めるコスト削減の範囲を拡大する。従来は10年間で4.8兆円のコスト削減を目標に掲げていたが、新たに1兆円超を上積みする方針だ。火力発電所の定期点検日数を短縮するなど、燃料を含む資材・役務の調達費を削減する。
東京電力ホールディングス(東京電力HD)の廣瀬直己社長が11月18日の国の委員会でコスト削減の拡大計画を明らかにした。東京電力グループは国が認定する「総合特別事業計画(総特)」に基づいて、2013〜2022年度の10年間に及ぶコスト削減を実施中だ。2014年1月に認定を受けた「新・総特」では合計4.8兆円のコスト削減目標を掲げたが、新たに1兆円超を上積みする(図1)。
東京電力グループは2016年4月から持株会社の東京電力HDのもと、燃料・火力発電事業のフュエル&パワー(FP)、送配電事業のパワーグリッド(PG)、小売事業のエナジーパートナー(EP)の3社に分割した(図2)。追加のコスト削減は事業会社の3社で実施する。
すでに3社は燃料費の削減などに取り組んでいるが、さらに資材や役務の調達構造を見直すほか、火力発電所の定期点検日数を短縮するなど内部の合理化を推進する予定だ。従来は1カ所の火力発電所の定期点検に100日以上をかけていたが、作業工程を改善して30日まで短縮する(図3)。
火力発電所のうち高効率のガス火力と石炭火力を最優先に定期点検日数を短縮することで、2016年9月末の時点で年間に数百億円レベルの燃料費を削減した。引き続き対象の火力発電所を拡大して燃料費の削減額を上積みする。それと並行して低効率の発電所を廃止してコスト競争力を高めていく。
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