古い水力発電所を再生、太陽光とバイオマスを加えて自給率30%超へエネルギー列島2016年版(32)島根(2/4 ページ)

» 2016年11月29日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

県の発電事業で年間15億円の利益に

 八戸ダムの水を利用する3つの発電所のうち、一番古くて規模が大きい第一発電所もリニューアルの対象に入っている。2基ある発電設備のうち小さいほうの2号機(発電能力1500kW)が2016年9月に新しい水車発電機で稼働した(図5)。第二発電所と同じタイプの横軸フランシス水車を採用している。

図5 「八戸川第一発電所」の全景(上)、リニューアルした2号機の水車発電機(下)。出典:島根県企業局、イームル工業

 一方の1号機は2018年度にリニューアルの工事に着手して、2020年度に運転を再開する予定だ。発電設備のほかに発電所の建屋を造り替え、さらにダムから水を引き込むための導水路や水圧鉄管も更新する大掛かりな工事になる。

 八戸川第一発電所の1号機を含めて、2020年度までに合計7基の発電設備を対象にリニューアル事業を完了する計画だ(図6)。発電能力は7基を合わせると2万4230kWに達する。リニューアルにかかる事業費は総額で146億円にのぼる。すべての水力発電所はリニューアル後に固定価格買取制度で売電する方式に変更して収入の増加を図る。

図6 水力発電所のリニューアル計画。出典:島根県企業局

 リニューアルの対象に入らない新しい水力発電所を加えると、13カ所の合計で発電能力は2万7050kWになる。すべてのリニューアル事業が完了してフル稼働する2021年度には、年間の発電量は1億2700万kWh(キロワット時)を見込んでいる。一般家庭の使用量(年間3600kWh)に換算して3万5000世帯分に相当する。島根県の総世帯数(29万世帯)の1割以上をカバーする電力を供給できる。

 一連のリニューアル事業によって水力発電所の年間故障停止時間は従来の505時間から240時間へ半減する見通しだ。固定価格買取制度の適用で売電収入が増加して、県が運営する発電事業の収益は大幅に改善する。水力発電所のほかに稼働中の風力発電所と太陽光発電所を加えると、2021年度から年間に15億円前後の利益を生み出す。

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