晴れの国に太陽光発電所が続々と誕生、ゴルフ場の跡地や池の水上にもエネルギー列島2016年版(33)岡山(2/4 ページ)

» 2016年12月06日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

動植物と共生できる太陽光発電を目指す

 中国山地の近くで巨大なメガソーラーが続々と動き出す一方で、瀬戸内海に面した沿岸部でも太陽光発電の導入プロジェクトは活発に進んでいる。雨が少なく平野も少ない笠岡市では、農業用に造成した広大な干拓地が瀬戸内海に面して広がっている。

 干拓地の造成に合わせて設けた遊水池の水上で、メガソーラー級の発電設備が2016年5月に運転を開始した。大阪ガスグループが建設・運営する「かさおか十一番町遊水地水上メガソーラー発電所」である。池の中央の約1万平方メートルに3700枚を超える太陽光パネルを浮かべた(図4)。

図4 「かさおか十一番町遊水地水上メガソーラー発電所」の上空から見た全景。出典:大阪ガス、エナジーバンクジャパン

 笠岡市が再生可能エネルギーの導入と収入の増加を図るために発電事業者を公募して実施したプロジェクトである。発電能力は973kW(キロワット)で、年間に100万kWhの電力を供給できる見込みだ。合わせて非常用の設備として小型のポータブル蓄電池14台を設置して防災にも生かす。池の水面の賃貸料として市には年間に約130万円が入る。

 瀬戸内海から近い遊水池には野鳥や魚が生息している。笠岡市は池の水面に浮かべるフロートを使って太陽光パネルを設置すれば、水質に悪影響を及ぼす可能性は低いと判断した(図5)。このフロートは高密度ポリエチレン製で、大阪ガスグループは兵庫県の農業用ため池で採用した実績がある。

図5 水上に設置した太陽光パネル(上、画像をクリックすると拡大)、太陽光パネルを搭載するフロート(下)。出典:大阪ガス、エナジーバンクジャパン

 笠岡市は干拓地の中に残っていた遊休地にもメガソーラーを誘致している。2016年3月に運転を開始した「いちご笠岡拓海町(たくみちょう)ECO発電所」である。1万3000平方メートルの用地に4200枚の太陽光パネルを設置した(図6)。発電能力は1.1MWで、年間の発電量は134万kWhを想定している。

図6 「いちご笠岡拓海町ECO発電所」の全景。出典:いちごグループホールディングス

 市には土地の賃貸料と発電事業の税収に加えて、売電収入の5%が寄付として入る契約になっている。すべての収入を合わせると年間で580万円になり、発電期間の20年間の累計では1億1600万円にのぼる見通しだ。さらに災害時に使えるコンセントと電気自動車用の急速充電器を敷地内に備えて防災対策にも役立てる。

 自治体が主導したメガソーラーでは、瀬戸内市の塩田跡地で進んでいるプロジェクトが代表格だ。GEグループが中心になって建設中の「瀬戸内Kirei太陽光発電所」である。実に500万平方メートルに及ぶ塩田の跡地に、合計で89万枚にのぼる太陽光パネルを設置する(図7)。

図7 「瀬戸内Kirei太陽光発電所」の建設地と完成イメージ(上)、架台の設置状況(下)。出典:瀬戸内Kirei未来創り

 発電能力は国内に建設中のメガソーラーの中では最大の230MWに達する。年間の発電量は2億5000万kWhを超えて、一般家庭の7万世帯分に相当する規模になる。瀬戸内市が事業者を公募して2014年から建設工事が始まった。造成工事や架台の設置工事を経て、2016年11月に1枚目の太陽光パネルの据え付けを開始している。全体が完成するのは2018年6月の予定だ。

 このプロジェクトを通じて瀬戸内市が得る収入は用地の賃貸料を中心に、工事期間と発電期間を合わせた25年間の累計で101億円になる。メガソーラーの建設に先立って、周辺地域の洪水を防ぐために排水ポンプを整備したほか、動植物が生息しやすいように湿地帯を設ける措置も施している。

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