ニュース
» 2016年12月07日 06時00分 UPDATE

情報化施工:インフラ保守保全作業を自動化するレーザー診断技術を開発

トンネルなどの老朽化したインフラの保守保全作業を自動・効率化するための先進レーザー診断技術を理化学研究所ら共同研究グループが開発した。

[長町基,スマートジャパン]

 理化学研究所(理研)およびレーザー技術総合研究所、量子科学技術研究開発機構、日本原子力研究開発機構の共同研究グループは、トンネルなどのインフラの保守保全作業を自動化、効率化するために「レーザー高空間分解能計測」、「レーザー打音」、「レーザーコンクリート切断」と呼ばれるレーザー技術を開発し、コンクリート供試体を計測対象として、3つの技術を合わせた屋外試験に初めて成功したと発表した。

 現在、トンネルなどのインフラの保守保全作業は、訓練を受けた技術者の目視確認、手作業(触診・打音・たたき落とし)に委ねられている。一方、国内の道路および鉄道のトンネルの総延長は8000キロメートルにも及ぶ。全てのトンネルの状態確認を人手だけに頼っていては、保守保全の作業回数の間隔を短くすることができず、安全確認の頻度を高めることができない。そのため、効率的で安全なインフラの保守保全法の確立が求められている。これまでにも効率化、高速化に向けて、自動化の方法が模索、検討されてきたが、良い方法は見つかっていない。そこで共同研究グループは、レーザー技術を用いて老朽化したインフラの保守保全作業を自動化、効率化するための研究開発に取り組んだ。

 理研は、これまでレーザーの共振器内に音響光学シフターを搭載した周波数シフト帰還型レーザーという特殊なレーザー技術を独自に研究開発してきた。このレーザー技術を土台に、ひび割れ、凹凸などトンネル内壁のなどインフラの表面の微細な状態を見極めるために「遠隔的散乱光検出・干渉計測・分光計測」の3つの方法を融合した高空間分解(幅0.15mmのひび割れおよび0.1mmの凹凸の検出が可能)での表層部3次元計測を実現した。

photo 「遠隔的散乱光検出・干渉計測・分光計測」の3つの方法を融合した高空間分解表面3次元計測システム試作機

 レーザー技術総合研究所、量子科学技術研究開発機構は「レーザー誘起振動波診断技術(レーザー打音)」と呼ばれる技術の高速化を図った。これは高強度のパルスレーザーをトンネル内壁に照射することでコンクリートを振動させ、その振動を別のレーザーによって分析することにより、コンクリート内部の欠陥を発見することができる技術。これにより従来はハンマーでコンクリートをたたき、技術者の耳で音(振動)を聞いていた打音法をレーザーによって置き換えることが可能となる。今回、量子科学技術研究開発機構を中心に素早く、しかも遠くからコンクリートを振動させる「高速動作が可能な振動励起レーザー」を開発したほか、主にレーザー技術総合研究所がコンクリート壁を素早くスキャンし振動の計測およびリアルタイム解析を行う「高速走査レーザー計測システム」も開発した。これらを用いて、内部に模擬的な欠陥を持つコンクリートを対象とし、屋外で毎秒50回の速さで内部の欠陥の計測に成功した。

photo レーザーによるコンクリート表面のひび割れの検出

 日本原子力研究開発機構は、レーザーを用いてトンネルを構成するコンクリートを溶断(切断)する技術の原理実証に成功した。さらに、この技術の高効率化、省力化、実用化に向けて、コンクリートの破砕および溶断条件のデータベース構築を進めている。これは従来の保守保全作業における、技術者による欠陥部コンクリートのたたき落とし作業に相当する手法であり、作業用架台などを必要としないため、安全に作業を実施することができる。

 これらの3つの技術はそれぞれ、現在インフラの保守保全作業で行われている目視確認と手作業による触診、打音検査、たたき落としに相当する方法となる。将来、インフラ保守保全作業を遠隔かつ非接触で、高速に行うための基礎になると考えられる。

photo レーザーを使った遠隔・非接触の保守・点検のイメージ図

 実構造物を対象とした性能検証、使用性・実用性向上など、社会実装に向けた課題は多く残されているが、今後、道路管理者や民間事業者の協力を得ながらさまざまなタイプの欠陥の検出・処理の実地検証を重ね、社会実装に向けた課題を解決し、実用化につなげていく。

 なお、この研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(管理法人:科学技術振興機構)によって実施された。

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

展示会/注目テーマ