ベースロード電源市場を2019年度に新設、水力・原子力・石炭火力を売買動き出す電力システム改革(77)(1/2 ページ)

政府は電力市場の改革に向けて、発電コストが低い「ベースロード電源」の取引市場を新設する方針だ。電力会社と電源開発が保有する水力・原子力・石炭火力のうち一定量を市場で売買するように義務づける。2019年度に市場を創設して、新電力が供給する需要の3割を目安に取引量を拡大する。

» 2016年12月07日 11時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

第76回:「電力会社が抱える電源を市場に、2017年度から販売量の10%めど」

 2017年度から2020年度にかけて、電力の取引市場は大きく変わる。その中でもインパクトが大きいのは「ベースロード電源市場」の新設である(図1)。電力会社と電源開発(J-Power)が保有する水力・原子力・石炭火力発電所の電力を市場に供出させることが目的だ。

図1 「ベースロード電源市場」の位置づけ。出典:資源エネルギー庁

 大規模な水力・原子力・石炭火力発電所は燃料費がゼロか安価に済み、LNG(液化天然ガス)や石油を使う火力発電と比べて原価が低い。発電した電力の大半は電力会社が需要家に販売する結果、市場に出回る量は極めて少ない。いずれの電源も出力を一定に保って運転することから「ベースロード電源」と呼んでいる。

 一方で燃料費が高いLNG火力や石油火力のほか、余剰電力で発電する揚水式を含めて、需要の増減に合わせて出力を調整する電源は「ミドル・ピーク電源」に位置づけている。電力会社が市場に供出する電力はミドル・ピーク電源が多い。自社で発電設備を持たない新電力(小売電気事業者)は市場を通じて価格の高いミドル・ピーク電源の電力を購入しているのが現状だ(図2)。

図2 電力会社が保有する電源と限界費用。LNG:液化天然ガス。出典:資源エネルギー庁

 電力会社が価格競争力で優位に立っている状況を改善するため、新電力がベースロード電源市場を通じて安価な電力を調達できるようにする。政府の方針では、新電力が顧客に供給する電力のうち、最大需要(ピーク)の3割程度をベースロード電源市場で取引することを想定している。

 2015年度の実績では新電力の最大需要を合わせると約2100万kW(キロワット)で、その3割に相当する630万kWをベースロード電源市場で供給することになる(図3)。そうすると年間の供給電力量は550億kWh(キロワット時)に達して、新電力の年間販売量(400億kWh)を上回って余剰電力が生まれる見込みだ。

図3 新電力の供給力とベースロード電源市場の期待効果。出典:資源エネルギー庁

 新電力はベースロード電源市場と通常のスポット市場(1日前市場)を組み合わせて、需要に応じた柔軟な調達が可能になる。さらに電力会社の小売部門が市場から調達する量を増やし、新電力を含めて余剰電力を市場に供出するため、従来よりも取引が活発になっていく。

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