これだけは知っておくべき「電力業界の基本」：3分で分かるこれからの電力業界（2）（3/3 ページ）

[江田健二，スマートジャパン]

再エネ発電の普及を後押しするＦＩＴ

　現在の電力業界における重要な課題として「再生可能エネルギー」普及への取り組みがあります。再生可能エネルギー源（太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス）を用いて発電された電気は、一般的にガス火力発電などと比較すると発電単価が高いので、簡単には普及が進みません。

　しかし、温暖化対策などの観点から再生可能エネルギー発電の普及は大きな課題であり、制度的なてこ入れの必要があります。そこで、政府は「固定価格買取制度（FIT： Feed-in Tariff）」という制度を用いることにより、再生可能エネルギーを用いた発電に対して経済メリットを付与しやすい環境を作ることにしました。FITは2012年7月1日にスタートし、これまでわが国の再エネ発電の普及を後押ししてきました。

　仕組みとしては、まず太陽光発電などの再エネ発電の設置者は、その電力を一定期間、通常より高い固定価格で電力会社に売ることができます。すると再エネ発電の設置者には、安定的に電気販売の収入が入ります。そのため、太陽光発電を設置して売電収入で長期的に安定した利益を得ようとする人が増えるというわけです。

　一方、電力会社は高い価格で再エネの電気を購入する必要があるので、電気を買えば買うほど経済的に苦しくなります。しかし、電気を利用している需要家全員から、少しずつ料金（再生可能エネルギー発電促進賦課金）を回収し、充当することができる仕組みになっているのです。

　このように、電気を利用する国民全員の費用負担を原資として、再エネ発電に経済メリットを生み出し、再エネ普及を促進する取り組みが進んでいます。

国内唯一の電力取引所「JEPX」

　電力自由化に伴い、その重要度が高まっているのが、電力の自由取引を行う会員制の卸売市場「JEPX（一般社団法人 日本卸電力取引所）」です。2003年11月に設立されたJEPXは、発電事業者などが電力の売買を行える国内唯一の市場として電力事業の拡大・発展に寄与しています。

　電力小売の全面自由化に伴い、電力事業が「発電」「小売」「送配電」に分かれることになりました。この中で「発電事業者」は電気を発電し、それを売ることにより利益を上げることが目的です。一方で、新電力会社など「小売事業者」は電気を調達し、それを小売して利益を伸ばすことを目的としています。JEPXは、こうした発電事業者と小売事業者の間の電力売買の仲介役として機能しているのです。

　JEPXには、一日前市場（スポット市場）や当日市場（時間前市場）のほか、先渡市場と掲示板市場が用意されており、日々電力が売買されています。例えば、活発な取引がある一日前市場（スポット市場）では、1日を30分ごとに分割し、48個（30分×48＝24時間）の個々の商品として取引が実施されます。

　なお、JEPXで取引を行う場合、取引会員となる必要があります。ただし、会員には誰でもなれるわけではなく、例えば“電気の実物”（実際の電気）を扱う事業者である必要があります。また、純資産額が1000万円以上といった条件もあり、その他にも各種要件をクリアしなければなりません。

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本稿は『3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編― 5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』（江田健二 ／一般社団法人エネルギー情報センター 著）からの転載です（アイティメディアの表記ルールに基づいて原本から表記を一部変更しています）。

著者：江田健二氏
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆／講演活動などを実施。 富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。 アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクト等に参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。 RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。

一般社団法人エネルギー情報センター
エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること、ITとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造することを目的に設立、運営。多くの人・組織が共に学び、考え、協力していく『場』となるプラットフォームを提供していきます。
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