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» 2016年12月19日 06時00分 公開

BIMで変わる建設業の未来(3):米国の最新現場に見る、テクノロジーで変革する建設業の今 (1/3)

BIMを筆頭に、建設業界に関連する最新技術の活用状況の現在と、今後の展望について解説していく本連載。第3回ではBIMやICTの登場で変化しつつある米国の最新現場の様子を紹介しながら、今後の建設プロセスの展望を探る。

[オートデスク 濱地和雄,BUILT]

 本連載では、建設業界におけるICTの活用の現状と将来、さらにBIM(Building Information Modeling)の歴史と現状を振り返って見てきた。今回は、建設プロジェクトにおけるステークホルダーの将来像について考えてみたい。ICTやBIMは、設計や施工のプロセスを変えるだけでなく、各関係者のあり方までも大きく変革させていくと考えられるからだ。

 本稿では特に、「建築家の職能の変化」「建設における標準整備」「施主の意識改革」という3つの観点で、これから日本でも起こるであろう変革について考えてみたいと思う。筆者が2016年11月に行なった米国視察で見聞した業界動向を交えながら解説していく。

建築家の職能の変化

 「建築家」と呼ばれる職能は、芸術家であり技術者であると言える。アーチ構造や透視図法を考案したブルネレスキに始まり、ミケランジェロやレオナルド・ダ・ヴィンチのような偉人は、その当時に利用可能なありとあらゆる技術を駆使して、建物や空間、彫刻、絵画、発明など多くの芸術作品を世に送り込んだ。その後、産業革命以降は工業化や分業化が進み、建築家は「建物デザイン」のプロフェッショナルとしての職能が確立したといえる。

 しかし、IT革命が起きている今、建築家という職能は今後どうなっていくのだろうか。図面作成という従来からの技術だけでなく、現在ではCAD、BIMといったコンピューターテクノロジーを駆使して、クリエイティブなアイディアを発信できるようになった。さらに、プログラミングという武器を身につけることで、人間の能力だけでは想像すら難しかったビジョンをカタチにできるようになる。

 上述したように、建築家の本来の職能を「その当時に利用可能な限りの技術を駆使して世に芸術作品を送り出すこと」と捉えるのならば、複雑、高度化が進む現代社会において、建築家がなりたい建築家になるためには、ICTを始めとする最新のテクノロジーの活用が不可欠な時代になりつつあるといえる。

 実際にこうしたテクノロジーの活用を実践しているのが、米国ボストンに本拠を置く設計事務所Sasaki Associatesだ。1953年に日系アメリカ人の故ササキ・ヒデオ氏が創設した設計事務所で、現在は270人ほどが在籍している。あのフランク・ゲーリー氏も学生時代にここで働いていたという。

 Sasaki Associatesのシニア・アソシエイトを務めるブラッドフォード・プレスボ氏は、「ここの建築家は全員がデザイナーであり、エンジニアであり、プログラマーだ」と語る。その言葉が表すように、トレーニングルームでは日々CADやBIM、プログラミングなどのテクノロジーを学べる環境が用意されている。その横にはCNCカッターや3Dプリンターが置かれた工作室があり、新旧のツールを駆使して木材や他の建材の加工を学べる。新入社員にはこうしたテクノロジーを活用して、椅子の設計と制作を行わせているそうだ。

最新テクノロジーと従来の手法を駆使して様々なデザインに挑戦するSasaki Associates(クリックで拡大)出典:オートデスク

 さらにはCNCカッターで切り出した建材でドレスをデザインし、ファッションショーに出展するなど、建築分野にとどまらない活動を展開している。このように、従来の手法や業界の枠にとらわず、現代のテクノロジーを最大限活用して多元的に活動することで、本来の建築家としての職能における創造力の向上を図るという狙いがあるという。

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