新幹線を安全にする3万回の手作業、3次元測量で20倍に効率化情報化施工(1/2 ページ)

JR東海が無道床橋梁の枕木交換に活用できる3次元測量システムを開発した。従来、枕木の厚さや大きさは作業員は手作業で計測していたが、新システムを活用することでこうした作業の効率を約20倍に高められるという。

» 2016年12月20日 06時00分 公開
[陰山遼将BUILT]

 JR東海(東海旅客鉄道)は2016年12月7日、無道床橋梁(りょう)の枕木交換の効率化に貢献する3次元測量システムを開発したと発表した。従来人手で行っていた枕木交換のための測量作業の効率を、約20倍に向上させることができるという。同社が東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策のために進めている改修作業に活用していく。

 東海道新幹線の線路部分には、基本的に振動吸収性に優れ補修作業を容易に行えるバラストを敷いた道床を採用している。しかし鉄桁構造の橋梁においては、重量を抑える観点などから道床バラストのない、無道床橋梁を導入している。無道床橋梁は、枕木やレールで橋桁で直接支えており、列車が通過する際に列車荷重により橋桁にたわみが発生するという特性がある(図1)。

図1 道床バラストを利用した線路(左)と無道床橋梁(右)出典:JR東海

 そこで実際の無道床橋梁では、このたわみを考慮してあらかじめ橋梁の中央部に近づくほどレールの上面が高くなるようにしている。これにより列車が通過するとレール上面の高さが平らになり、車両の快適性が向上するためだ。こうしたレール位置の高さの調整に寄与しているのが枕木だ。1本ごとに異なる厚さの枕木を、連続的に配置する仕組みになっている(図2)。

図2 無道床橋梁の仕組み。中央のレールが高くなるようにするため、1本1本の枕木の厚さが異なる(クリックで拡大)出典:JR東海

 こうした特性からこれまで無道床橋梁の枕木を交換するにあたっては、作業員が1本ごとに厚さを定規などでミリ単位の精度で測量し、このデータをもとにして同じサイズの橋梁枕木を製作していく必要があった(図3)。

 JR東海では現在、東海道新幹線の脱線・逸脱防止対策を目的に無道床橋梁に「脱線防止ガード」の設置を進めている。現在の計画では約24.4km(キロメートル)の施設作業が必要であり、それに伴う枕木の交換本数は約3万本を見込んでいる。従来の人手による測量手法では、膨大な手間が掛かるため、これを効率化する技術が求められていた。

図3 従来の定規を利用した測量 出典:JR東海
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