小水力発電所が農山村に復活、ため池には水上式の太陽光発電エネルギー列島2016年版(36)徳島(2/3 ページ)

» 2016年12月27日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

ため池に2000枚を超える太陽光パネル

 農業用の設備を生かした再生可能エネルギーの導入プロジェクトは、ため池にも広がってきた。東部の阿南市にある農業用ため池の「伊沢池(いさわいけ)」では、水上式の太陽光発電所が2016年10月に運転を開始している(図5)。

図5 「伊沢池水上太陽光発電所」の全景(画像をクリックすると拡大)。出典:シエル・テール・ジャパン

 池の広さは12万平方メートルあって、周辺部を除く6.8万平方メートルに太陽光パネルを設置した。高密度ポリエチレン製のフロートを水上に並べて、合計2340枚の太陽光パネルで発電する。発電能力は630kWになり、年間に61万kWhの発電量を見込んでいる。一般家庭の170世帯分に相当する電力を供給できる。

 水上式のメリットの1つは、陸上と違って造成工事が不要な点にある。水上でフロートを組み立てて太陽光パネルを設置してから、水中にアンカーを垂らして固定する。あとは陸上のパワーコンディショナーと接続すれば工事が完了する(図6)。伊沢池の太陽光発電設備の工期は3カ月で済んだ。

図6 太陽光パネルの設置状態(画像をクリックすると拡大)。出典:シエル・テール・ジャパン

 フロートはフランスのシエル・テール社が開発したもので、同社の日本法人が伊沢池の太陽光発電所を運営している。シエル・テールのフロートは日本国内でも水上式の太陽光発電所で数多く使われているが、自社で発電所を建設・運営するのは初めてだ。今後も全国各地にある農業用ため池に水上式の太陽光発電所を展開していく。

 徳島県内では内陸の町や村で再生可能エネルギーの導入が活発に進んでいる(図7)。佐那河内村から神山町(かみやまちょう)と上勝町(かみかつちょう)にまたがる山岳地帯は、四国の中でも特に風況に恵まれた地域だ。この一帯では全国に風力発電所を展開するユーラスエナジーグループが大規模な風力発電所を計画中だ。17基の大型風車を設置して、発電能力は最大39MW(メガワット)を予定している。

図7 徳島県の市町村。出典:徳島県経営戦略部

 さらに北に向かって上板町(かみいたちょう)では、全国各地で太陽光発電所を運営するNTTファシリティーズが「F上板太陽光発電所」を2016年11月に稼働させたところだ(図8)。ゴルフ場の土地の一部に太陽光パネルを設置した。発電能力は2.65MWで、年間の発電量は296万kWhを見込んでいる。一般家庭の使用量で820世帯分の電力になる。

図8 「F上板太陽光発電所」の全景。出典:NTTファシリティーズ

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