徳島県は2015年度から「自然エネルギー立県とくしま推進戦略」に取り組んできた。全国でも有数の日照時間や豊富な森林資源を生かして、再生可能エネルギーによる電力を拡大させる構想だ。県内の電力の自給率を2020年度に25%へ、2030年度には37%まで引き上げる目標を掲げている。
固定価格買取制度による発電設備の導入・認定状況を見ると、バイオマス発電の認定量が大きく伸びた。すでに認定を受けたバイオマス発電設備の規模は6万kWを超えて、全国でも14位に入っている(図9)。
これまでに運転を開始したバイオマス発電設備の中では、繊維メーカーのクラボウが阿南市に建設した「徳島バイオマス発電所」の規模が大きい。広さが10万平方メートル以上ある工場の構内に建設した(図10)。地域で発生する間伐材などを燃料に使って最大で6.2MWの電力を供給できる。
2016年7月に運転を開始して、年間の発電量は4000万kWhを想定している。一般家庭の1万1000世帯が使用する電力量に匹敵する。バイオマス発電設備の中核部分を構成するボイラーはクラボウが独自に開発した。
徳島県では水素エネルギーの普及にも力を入れて取り組んでいる。再生可能エネルギーと組み合わせて水素の製造・利用を拡大する「徳島県水素グリッド構想」を2015年10月に策定した。県内の工場で発生する副生水素に加えて、再生可能エネルギーから作ったCO2(二酸化炭素)フリーの水素を地産地消する計画だ。
国が推進する水素エネルギーの普及ロードマップに合わせて、2030年度までに燃料電池車を3600台に、水素ステーションを11カ所に整備していく。水素ステーションは導入しやすい移動式を先行させる方針だ。2016年3月には県内初の「STN徳島移動式水素ステーション」が徳島市で営業を開始した(図11)。市内の2カ所のあいだを移動して、平日の日中に燃料電池車に水素を供給する。
こうして水素を含むクリーンエネルギーのインフラを整備しながら、災害に強い低炭素社会を作り上げていく。新しい低炭素社会のモデルを示す「スマート社会とくしま構想」を2016年3月に打ち出した。
中山間地域の町や村をモデル地域に設定して、再生可能エネルギーと水素エネルギーを普及させるのと当時に、最新のICT(情報通信技術)を駆使してエネルギーを有効に利用できる仕組みを広める計画だ(図12)。県民の生活基盤の向上と同時に産業の活性化につなげる狙いがある。
2015年版(36)徳島:「2030年に電力の自給率37%へ、「環境首都」を目指して東京に対抗」
2014年版(36)徳島:「海峡をめぐる自然エネルギー、太陽光から潮流まで電力源に生かす」
2013年版(36)徳島:「市民参加型の発電設備が拡大中、全国40位からの脱却を図る」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.