香川県内のバイオガス発電の取り組みでは、名物の讃岐うどんのカスを利用した「うどんまるごと循環プロジェクト」が広く知られている。うどんの製造工程で生まれる廃棄物を発酵させて、最初にバイオエタノールを作り出す。その残りカスを再び発酵させると、バイオガスを発生して発電に利用できる(図4)。
バイオガスを取り出した後の残りカスから肥料を作ることもできる。うどんの廃棄物から再生可能エネルギーを生み出して、地域の食品産業と農業を連携できる循環型の社会システムになっている。地元の産業機械メーカーが中心になって2012年から取り組んできた全国でも先進的な事例だ。
うどんや下水のほかにも、再生可能エネルギーとして利用できる廃棄物は数多くある。香川県内を中心に産業廃棄物の処理施設を運営する富士クリーンはNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援を受けて、さまざまな種類の廃棄物を混合して発電に利用できる新システムの事業性評価に取り組んだ(図5)。
家庭から収集する生ごみをはじめ、食品廃棄物や畜産廃棄物、紙くずや下水汚泥まで含めて再生可能エネルギーに転換する試みだ。メタン発酵に適さない廃棄物を選別した後に、発酵施設でバイオガスを作って電力と熱を供給する。
事業性の評価にあたっては、讃岐うどん発祥の地で有名な綾川町(あやがわちょう)にある産業廃棄物の中間処理施設を対象に選定した(図6)。バイオガスから作った電力と熱を処理施設の一部に供給したうえで、余剰電力を売電して収益を得るスキームだ。
すでに2015年度に事業性の評価を完了して、その結果をもとにNEDOがモデルプラントによる実証事業を検討する予定になっている。各種の廃棄物を組み合わせたバイオマス発電・熱利用システムを実用化できれば、全国各地の廃棄物処理施設で再生可能エネルギーの導入が進んでいく。
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