廃棄物発電がうどんから下水へ、ため池には太陽光発電をエネルギー列島2016年版(37)香川(3/3 ページ)

» 2017年01月10日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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小さな県に1万5000カ所のため池

 香川県のバイオマス発電の取り組みは始まったばかりだ。固定価格買取制度の認定を受けた発電設備は高松市の下水処理場を含めて2件しかない。再生可能エネルギーの導入量の大半は太陽光発電だ。面積が全国で最も小さいにもかかわらず、すでに運転を開始した太陽光発電設備の規模では27位に入っている(図7)。

図7 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 その中でも電力設備工事を手がける四電工グループの取り組みが活発だ。四国で11カ所に展開する太陽光発電設備のうち5カ所が香川県内に集まっていて、発電能力を合計すると23MW(メガワット)になる(図8)。

図8 四電工グループの太陽光発電事業。出典:四電工

 特に規模が大きいのは、観音寺市で2016年3月に運転を開始した「サンシャインパーク豊浜」である。繊維メーカーの富士紡グループが所有する工場の跡地を借り受けて建設した。用地の面積は16万平方メートルに及び、発電能力は12.5MWに達する(図9)。年間の発電量は1300万kWhを見込み、一般家庭で3600世帯分の電力を供給できる。

図9 「サンシャインパーク豊浜」の全景。出典:四電工

 香川県は降水量が少ないために、県内には農業用ため池が1万5000カ所もある。ため池の水面に太陽光パネルを設置できれば、太陽光発電の導入量を一気に拡大できる。県の農政水産部は2014年11月から1年以上をかけて、ため池の1つ「吉野大池」で実証実験に取り組んだ(図10)。

図10 「吉原大池」の全景(上)、太陽光発電の実証実験設備(下)。出典:香川県農政水産部

 1枚の発電能力が255W(ワット)の太陽光パネル24枚を組み合わせて、池の3カ所に設置した。水上に浮かべるフロートの種類を変えて、発電量や耐久性、導入コストを比較する。太陽光パネルの一部は設置角度を3通りに分けて発電量の違いを検証した。

 3カ所を合計した年間の発電量は2.3万kWhで、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)は国内の標準を上回る14.3%になった。太陽光パネルは光を受けて温度が上昇すると発電量が低下する特性があるが、水上に設置したことでパネルの温度上昇を抑えられた。

 フロートの種類による発電量の差はほとんどなく、一方で耐久性とコストの面では一長一短が見られた。パネルの設置角度は30度・12度・5度の順に発電量が多かったが、角度を大きくするためには隣接するパネルに影ができないように設置間隔を広くとる必要がある。こうした実証結果を参考にしながら、県内に数多くある農業用ため池に水上式の太陽光発電を普及させていく。

 すでに高松市にある「新池」では、水上式のメガソーラーを建設するプロジェクトが進んでいる。日本で初めて水上式メガソーラーを埼玉県で稼働させたウエストグループが、高松市から池の一部を借り受けて1万枚の太陽光パネルを設置する計画だ。発電能力は2.7MWを予定している。この水上式メガソーラーが運転を開始すれば、各地のため池に波及していく期待がふくらむ。

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2015年版(37)香川:「市民が広げる太陽光発電とバイオマス、産業とエネルギーを地域循環型に」

2014年版(37)香川:「塩田やため池を発電所に、うどんバイオマスも進展」

2013年版(37)香川:「うどん県が挑むバイオマス発電、ようやく広がる太陽光」

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