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» 2017年01月11日 09時00分 UPDATE

2017年のエネルギートレンド(3):燃料電池とCO2フリー水素が全国へ、空港にホテルに競馬場にも (1/4)

日本が世界をリードする水素エネルギーの導入プロジェクトが全国に拡大中だ。太陽光や風力で作った電力からCO2フリーの水素を製造して燃料電池で利用する取り組みをはじめ、家畜のふん尿や下水から水素を製造して地産地消する試みも始まる。水素社会が大都市と農山村の両方に広がっていく。

[石田雅也,スマートジャパン]

 政府が地球温暖化対策の一環で推進する水素社会の構築に向けて、数多くの自治体や有力企業が水素エネルギーの活用に相次いで乗り出している。典型的な例が大阪府だ。湾岸地域を中心に水素を製造・貯蔵・輸送するインフラを整備しながら、水素で発電する燃料電池を企業や家庭に普及させる「H2Osakaビジョン」を2016年3月に策定した(図1)。水素エネルギーの活用で大阪の経済成長をけん引していく。

図1 「H2Osakaビジョン」の全体像(画像をクリックすると拡大)。出典:大阪府商工労働部

 すでに大阪府内では水素エネルギーの導入が始まっている。特に積極的に取り組んでいるのは関西国際空港だ。空港内で消費するエネルギーをCO2(二酸化炭素)フリーの水素に転換して、世界で最高水準の「環境先進空港」を目指す。最初のプロジェクトは貨物の運搬に使うフォークリフトを従来のガソリンや電動タイプから燃料電池タイプへ切り替えていく(図2)。

図2 関西国際空港に導入した燃料電池フォークリフト(上)、水素を供給する圧縮水素容器(左下)とディスペンサー(右下)。出典:豊田自動織機、新関西国際空港

 これまでに3台の燃料電池フォークリフトを導入して、CO2削減効果や作業効率を検証している。ガソリンを使うフォークリフトと比べてCO2削減効果は顕著だ。電動タイプと比較すると充電やバッテリー交換の手間が省けて作業効率が大幅に向上する。今後は空港内で稼働中の数百台にのぼるフォークリフトを燃料電池タイプへ順次切り替えていく。

 同様の取り組みは神奈川県の横浜市と川崎市でも始まっている。2016年11月に東京湾岸にある卸売市場と物流倉庫に燃料電池フォークリフトを1台ずつ導入した。さらに2017年度には横浜市内の風力発電所でCO2フリーの水素を製造する計画だ(図3)。製造した水素はハイブリッドトラックによる簡易水素充填車で現地まで運んで燃料電池フォークリフトに供給する。

図3 「横浜市風力発電所」に設置する実証設備のイメージ(上)、水素サプライチェーンの設備構成(下、画像をクリックすると拡大)。出典:横浜市ほか

 風力発電所の敷地内には水から水素を作る水電解装置のほかに、蓄電池システムや水素貯蔵タンクも併設する。風力発電は天候によって発電量が変動するが、余剰電力を蓄電池に貯めながら水素を製造すれば、再生可能エネルギーの電力を最大限に活用できるようになる。

 プロジェクトチームの試算によると、ガソリンフォークリフトや電動フォークリフトと比べてCO2排出量を80%以上も削減できる見込みだ。今後は燃料電池フォークリフトの導入場所を4カ所に増やして、各3台の合計12台で実用化に向けた運用体制を確立していく。水素の製造から貯蔵・輸送・利用までのサプライチェーンを構築して将来の水素エネルギーの普及を促進する。

 兵庫県の神戸市では、海外から未利用の水素エネルギーを輸入して国内各地に供給するプロジェクトが進んでいる。日本の石炭輸入量の半分以上を占めるオーストラリアで石炭から水素ガスを製造して、液化したうえで日本まで輸送する試みだ。神戸市が川崎重工業と共同で、沖合に浮かぶ神戸空港島に液化水素のサプライチェーンを構築する(図4)。

図4 神戸空港島の全景と液化水素サプライチェーンの実証事業拠点(上)、海外から輸入する液化水素のサプライチェーン(下)。出典:神戸市環境局

 液化水素を揚荷・積荷できる荷役設備のほかに、配管や貯蔵タンクを設置して周辺地域に水素を供給できるインフラを整備する。2019年度に試運転を開始して、東京オリンピック・パラリンピックを開催する2020年度には実証運転へ移行する計画だ。国内で水素エネルギーの利用量が拡大する時期をにらみながら、大規模な供給拠点を先行して作り上げていく。

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