電力×地域・地方――地域特化型エネルギー事業3分で分かるこれからの電力業界(5)(3/3 ページ)

» 2017年01月19日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]
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3 新規ベンチャー型

 ここに属するのは、もともと地元愛の強い人たちが、「地域コミュニティーの中で何か新しいビジネスを始めたい」と考えて数人で立ち上げた会社などのほかに、「電力自由化に乗じて何か新しいベンチャーを興してみよう」と考えて参入してきた会社も多くあります。

 後者の多くは、もともと地域にあまり接点のない人々が、全国市場で戦うよりもドミナント戦略(特定の地域内に集中して事業展開すること)に的を絞ろう、という方針で新規事業を始めた、というのが特徴です。こうした会社のなかには、これまで太陽光パネルを販売していた会社や、電力事業とは直接関係のない不動産系の会社なども多く存在します。

会社選びのチェックポイント

 これら地域特化型電力会社のビジネスモデルが持つ特徴として、「市場規模がターゲット地域に限定されやすい」ことが挙げられます。そのため、ターゲット地域に受け入れられようと描いた戦略が崩れてしまうと、途端に電力ビジネスの継続が難しくなることも考えられます。

 全国など大きな市場をターゲットとしたビジネスモデルであれば、一部の地域では需要を取り込めない場合でも、その他の地域でカバーすることもできますが、地域特化型ではそれが難しいケースが多いでしょう。ターゲット地域の電力需要にもよりますが、狙っている市場自体が小さいこともありますので、電力小売という事業だけではビジネス拡大に限界がある場合もあります。

 一方で、特定の地域という明確な販売先が定まっていることは、マーケティング上では利点ともなり得ます。ひとたび地域に住む需要家に受け入れられると、地域のコミュニティー力を生かした経営基盤を築くことができます。そうした活動の中で、電力で地域を活性化させるような多様なビジネスへの展望がひらけます。

 ただ、企業によってどういった地域顧客との接点を持っているかはさまざまですので、会社選びにおいては慎重な見極めが必要でしょう。

 具体的なチェックポイントとしては以下の通りです。

  • 会社の規模。これからの事業継続の可能性は?
  • 経営者が地域貢献に対する明確な理念、強い思いを持っているか
  • 顧客接点を持つ本業があるか
  • 資本がその会社単独でなく、自治体からも入っているのか
  • 実際に電力の供給実績があるのか

 また、将来的な安定を求める人には「本業の顧客囲い込み型」が、地域貢献をしたい人には「自治体主導の地方創生型」が、新しいことに自由度を持って挑戦してみたいという人には「新規ベンチャー型」がお勧めと言えるでしょう。

 会社選びのポイントとしては、その会社の実像をきちんと調べ把握し、本当に自分の将来を預けられる会社かどうかを見極めることが重要になってきます。

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本稿は『3時間でわかるこれからの電力業界 ―マーケティング編― 5つのトレンドワードで見る電力ビジネスの未来』(江田健二 /一般社団法人エネルギー情報センター 著)からの転載です(アイティメディアの表記ルールに基づいて原本から表記を一部変更しています)。

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著者:江田健二氏
「環境・エネルギーに関する情報を客観的にわかりやすく広くつたえること」「デジタルテクノロジーと環境・エネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること」を目的に執筆/講演活動などを実施。 富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。 アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。 エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社のCRMプロジェクト、大手化学メーカーのSCMプロジェクトなどに参画。その後起業、環境・エネルギービジネスの推進や企業のCSR活動を支援している。 RAUL株式会社 代表取締役、一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人エコマート運営委員。

一般社団法人エネルギー情報センター
エネルギーに関する正しい情報を客観的に分かりやすく広くつたえること、ITとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造することを目的に設立、運営。多くの人・組織が共に学び、考え、協力していく『場』となるプラットフォームを提供していきます。
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