電気自動車初、9000kmのダカールラリー完走電気自動車(1/2 ページ)

スペインACCIONAは、自社開発した4輪駆動の電気自動車「ACCIONA 100% Ecopowered」が、2017年1月に開催されたダカールラリーにおいて完走したと発表した。電気自動車として初の快挙である。厳しい走行環境にも電気自動車が対応できることから、パリ協定実現にも役立つことを示した形だ。

» 2017年01月20日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 スペインACCIONA*1)が電気自動車で快挙を成し遂げた。2週間に及ぶ「第39回ダカールラリー」において、同社の電気自動車「ACCIONA 100% Ecopowered」が完走したと2017年1月15日に発表(図1)。歴代のダカールラリーには約1万8000台の車両が参加している。電気自動車が完走したのは、ラリー史上初であるという。

 同社は今回の完走をもって、再生可能エネルギーには競争力があること、第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)において195カ国が合意を締結した「パリ協定」は、自動車でも対応可能なのだということを示したという。

*1) 同社はスペインに本社を置く多国籍企業。建設などのインフラ事業と再生可能エネルギー事業に強みがある。

図1 ゴール地点に到達したところ 出典:ACCIONA

アフリカから南米へ

 ダカールラリーは1979年から続く伝統のあるレース*2)。ダカールはアフリカ西端に位置するセネガルの首都の名称だ。サハラ砂漠を経由することから世界一過酷なモータースポーツ競技といわれている。

 テロ活動などを理由として、2009年からは舞台を南米に移している。南米にはサハラ砂漠はないものの、急峻なアンデス山脈がそびえる。今回は平たんなパラグアイの首都アスンシオンを出発し、山脈のただなか、標高3630mのラパス(ボリビア)を経由する。世界で最も標高が高い首都として知られる都市だ。その後、再び低地にあるアルゼンチンの首都ブエノスアイレスに向かった(図2)。

 コースは全12のステージに分かれている。コースの特徴は砂利、泥、砂なのだという。大山脈を横断・縦断するため、半分のステージで標高が3000mを超えた。走行距離は合計8782kmである(東京−大阪間の約18倍)。

*2) 走行する車両によって5種類の部門がある。四輪(Cars)、二輪(Motorbikes)、四輪バギー(Quads)、トラック(Trucks)、ドアのない軽トラックに似た形状の多用途四輪車(UTV:Utility Task Vehicle)である。ACCIONA 100% Ecopoweredは四輪部門で参戦した。

図2 ダカールラリーのコース 南アメリカ大陸中央部を示した。スタート地点(アスンシオン、右中央)と中間地点(ラパス)、ゴール地点(ブエノスアイレス)を示した。灰色の部分は標高が3000mを超えている。濃い緑色の部分は標高200m以下。

悪路、悪天候に悩まされる

 今回は491台が参加。2017年1月2日にアスンシオンを出発後、1月8日には中間地点のラパスに到達した(図3)。二輪部門の元チャンピオンであり、スポーツディレクターでもあるMarc Coma氏は第39回のコースが南米で最も難しいと発言。実際に四輪部門ではこの時点で既に20%の車両がリタイアしていた。

図3 ラパスに到着したところ 出典:ACCIONA

 気候条件も厳しかった。天候があまりにも悪化したため、直前のステージ6がキャンセルされたほどだ。ACCIONA 100% Ecopoweredのドライバーの1人であるAriel Jatón氏*3)はコンディションについて発表資料の中でこう語っている。「(50度を超える)パラグアイの高温、アルゼンチンを通過する際の泥、(ラパスの)集中豪雨だ。蓄電池と水は相性が悪いため、事前に蓄電池と絶縁システムを特に入念にテスト済みだ」。集中豪雨でも事なきを得た。

*3) もう1人のドライバーはTito Rolón氏。

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