太陽神ラーが風と勝負、エジプト自然エネルギー(1/4 ページ)

経済規模が大きな途上国はいずれも電力不足に悩まされている。経済成長に追い付かないのだ。砂漠の国エジプトにも電力問題がある。政府は再生可能エネルギーで電力の20%を得る計画だ。ドイツのフラウンホーファー研究所が、各種のエネルギーコストを計算、最も安価な技術は何だろうか。

» 2017年01月24日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 灼熱の砂漠が広がるエジプト(図1)。エジプトで再生可能エネルギーを開発するなら、太陽光発電や太陽熱発電が適していそうだ*1)。しかしより適した発電方式があった。ドイツフラウンホーファー研究所の調査結果だ。

 発展途上国(途上国)は先進国よりも大規模に再生可能エネルギーへ注力している。2015年には、投資額や新規導入量でOECD諸国を上回った(関連記事)。再生可能エネルギー導入の機運がある。

*1) エジプト南部のアスワンは、世界で最も雨が少ない場所として知られている。1951年から1978年の年間降水量の平均値は、わずか0.5mmだった(日本は800〜4000mm)。

図1 エジプトの岩石砂漠 砂砂漠よりもこのような岩石砂漠の比率が高い 出典:Iva Balk氏(pixabay)

 途上国がエネルギー開発を進める際、不足しがちなのが基礎的な調査だ。自国の各地域でどのようなタイプの再生可能エネルギーが適しているのか、発電コストはどの程度に落ち着くのか。

 同研究所の太陽光関連の部署(フラウンホーファーISE)は、カイロに立地するドイツ大使館の委託を受け、太陽光発電関連のEPC事業者であるエジプトSolarizEgyptと共同で発電コストを調査、「Electricity cost from renewable energy technologies in Egypt」として公開した。

風力が最も安い

 2016年第3四半期時点にエジプト国内で新規発電所を建設した場合の発電コストを、図2に示す。意外なことに、太陽光発電(黄色)よりも風力発電(青色)の発電コストが低い。

 縦軸は発電コストを2016年時点のドル価格に換算したもの。発電所の開発から廃止まで全期間中に発生する費用を、全期間中の総発電量で割ったLCoE*2)の値である。

*2) LCoE(Levelized Cost of Electricity)は運用中の発電コストだけではなく、設計や建設、保守管理、燃料費、撤去など全てのコストを含むため、さまざまな発電技術を横並びで比較しやすい。

図2 2016年時点のエジプトにおける発電コスト 左から小規模太陽光、大規模太陽光、系統に接続されていない太陽光、集光型太陽熱、陸上風力、ディーゼル、コンバインドガスタービン(CCGT) 出典:フラウンホーファーISE

 陸上風力発電のLCoEの値は、1キロワット時(1kWh)当たり、0.048〜0.102ドル。LCoEの値に幅があるのは、風力発電に適した立地とそうでない立地があるからだ。建設コストは1100〜1500ドル/kWの範囲となった。

 太陽光発電は規模や設置方式から3種類に分かれている。系統に接続する2種類をまとめると、0.079〜0.181ドル/kWhとなった。大規模太陽光の一部が風力とほぼ互角の位置にあり、2種類の火力とも競争可能な位置にある。太陽光の建設コストは1kW(最大出力)当たり、1300〜2000ドル。

 高温で乾燥した地域に向くとされている集光型太陽熱発電は、エジプトでは最もコストが高かった。0.125〜0.218ドル/kWhである。立ち上げ時に必要な建設コストは、4000〜5200ドル/kW。

 風力発電は、LCoEはもちろん、建設コスト(初期投資費用)においても太陽光や集光型太陽熱によりも勝っているものが多い。これが現時点の結論だ。

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