太陽神ラーが風と勝負、エジプト自然エネルギー(3/4 ページ)

» 2017年01月24日 13時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

再生可能エネルギーへの投資が発電コストを左右する

 フラウンホーファーISEは、現時と将来の発電コストを予測する一方、発電コストをより引き下げる方策も示した。鍵は資金調達コストにあった。

 エジプトのような途上国は、ドイツのような先進国と比較して資金調達コストがかさむ。これが再生可能エネルギーのLCoEを引き上げていた。

 2016年時点のLCoEの値をより詳しく示した図4は、図3とよく似ている。違いは斜線を施した値を追加したことだ。斜線の値は、エジプトにおける資金調達コストが、ドイツと同等まで下がったと仮定したときのLCoE。

 化石燃料を利用する右端の技術は資金調達コストにあまり影響を受けない。しかし、太陽光や太陽熱、風力は強い影響を受ける。特に集光型太陽熱はこのような条件のもとで初めて化石燃料と競合可能になるほどだ。

図4 2016年時点のエジプトにおける発電コスト(その2) ドイツ並みの資金調達コストの場合(斜線)を併記した。左から小規模太陽光、大規模太陽光、系統に接続されていない太陽光、集光型太陽熱、陸上風力、ディーゼル、コンバインドガスタービン(CCGT) 出典:フラウンホーファーISE

慢性的に電力が不足、需要がさらに拡大

 エジプトはアフリカ有数の大国だ。GDPはアフリカ2位、人口は3位の位置にある。2015年の経済成長率は4.2%であり、近年の電力需要の伸び率は5〜6%の範囲にある。だが、電力が足りない*4)。特に電力需要が伸びる夏季には供給が追い付いていない。

 エジプトは産油国ではあるものの、自国の需要をまかなうことはできず、産出量が顕著に低下している*5)。2013年時点の発電量1681億kWhのうち、91.2%を火力が担っているため、この状況はまずい。

 そこで、政府は2020年までに再生可能エネルギーから20%の電力を得る計画を立案。政治的な混乱があり、計画は2022年に延期されたものの、20%の目標を堅持している。

 計画によれば、20%のうち、12ポイントを風力から得る。規模は7200メガワット(MW、720万キロワットに相当)。残りの6ポイントを水力(2851MW)、2ポイントを太陽光(1320MW)でまかなう計画だ。

*4) エジプトの電化率は99.6%(2013年)と非常に高い。図5に示したように人口が特定の地域に集中している利点だ。
*5) 1993年時点の原油産出量は世界シェア1.6%の4627万トン、2013年時点は3301万トン。2013年時点の火力以外の発電比率は、水力7.9%、風力0.8%、太陽光0.1%だった。

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