「改正FIT法」の施行日が迫る、買取制度に大きな変化自然エネルギー(1/3 ページ)

固定価格買取制度(FIT)の実施方法を規定した法律が5年ぶりに改正される。2017年4月1日に施行する「改正FIT法」では、買取価格の決定方法を電源別に分けることに加えて、買取の対象になる発電設備の認定方法を大幅に変更する。認定を受けるためには保守点検を含む事業計画の策定が必要だ。

» 2017年01月27日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 いよいよ2カ月後に迫った「改正FIT法」の施行を目前に、発電事業者をはじめ送配電事業者や小売電気事業者も準備を急ぐ必要がある。固定価格買取制度(FIT:Feed-In-Tariff)を規定するFIT法が2012年7月1日に施行した当初の内容から大きく変わる。

 主な変更点は5つあるが、特に発電事業者と小売電気事業者にとって重要な項目は3点に絞られる。新しい認定制度の創設、買取価格の決定方法の変更、さらに発電した電力の買取義務者が送配電事業者へ移行することだ(図1)。それぞれの改正点の詳細を正しく把握して2017年度からの事業に取り組まなくてはならない。

図1 「改正FIT法」の主な変更点(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 政府は2016年5月に改正FIT法が成立したことを受けて、新しい認定制度に関する省令の公布などを進めてきた。2017年度以降の買取価格の案も12月にまとまり、現在はパブリックコメントを募集している段階だ(図2)。通常はパブリックコメントによって価格案を変更することはないため、2017年度から認定する案件の買取価格は原案どおりに確定する。

図2 法改正に向けた施策とスケジュール(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 新しい認定制度では、個々の発電設備の買取価格(法律上は調達価格)を決定するタイミングが認定の取得時点になる(図3)。従来は認定を取得した後に電力会社に対して発電設備の接続を申し込み、接続契約を結んだ時点で買取価格を決定する方式だった。新制度では認定の申請と接続の申し込みを並行して進めることができる。買取価格の決定が早まり、運転開始までのリードタイムも短くなる。

図3 新しい認定制度の流れと認定基準(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 ただし認定の基準が抜本的に変わる点に注意が必要だ。現行の発電設備を認定する制度から、今後は発電事業の計画全体を認定する方法になる。発電設備の設計・施工に関する情報に加えて、運転開始後の保守点検や運転終了後の撤去を含めた事業計画を申請時に提出しなくてはならない(図4)。

図4 事業計画の主な要件。全電源に共通する事項(上、画像をクリックすると拡大)、電源別の主な要件(下)。出典:資源エネルギー庁

 政府は太陽光からバイオマスまで5種類の電源ごとに、事業計画を策定するためのガイドラインを用意した。発電事業者は電源別のガイドラインに沿って事業計画を策定することが求められる。現行の制度と比べて認定を取得するハードルが高くなった。

 事業計画の策定は新規の認定案件だけではなく、すでに認定を取得した発電設備に対しても義務づけられる。運転中の発電設備であっても事業計画の提出が必要になる。もし新制度の施行日から6カ月以内、つまり9月30日までに事業計画を提出しない場合には認定が取り消されてしまう。

 このほかに新制度を施行する前日の3月31日までに電力会社と接続契約を締結できないと、取得済みの認定が失効する(図5)。9カ月前の2016年7月1日以降に認定を取得したケースでも、認定を受けてから9カ月以内に接続契約を締結する必要がある。現行の制度のもとで認定を取得した発電事業者も安心できない。

図5 2016年度までに認定を取得した発電設備に対する経過措置(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁
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