「改正FIT法」の施行日が迫る、買取制度に大きな変化自然エネルギー(3/3 ページ)

» 2017年01月27日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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買い取った電力は市場で売買する

 小売電気事業者にとっては、電力の買取から供給までの流れが変わる点にも注意が必要だ。従来は小売電気事業者が発電事業者から買い取る方式だったが、改正FIT法の施行後は送配電事業者(電力会社の送配電部門)が買い取る形になる(図10)。小売電気事業者は送配電事業者から電力の供給を受けて需要家に提供する。

図10 送配電事業者による買取イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 実際に電力を売買する方法は卸電力取引所を通じた形が基本になる。送配電事業者が発電事業者から買い取った電力を卸電力取引所に引き渡して、小売電気事業者が市場で買い付ける方法だ(図11)。送配電事業者の意向に関係なく、小売電気事業者が市場を通じて自由に再生可能エネルギーの電力を購入できる。

図11 FITの認定電源で発電した電力の供給形態。出典:資源エネルギー庁

 ただし例外になるケースがある。発電事業者と小売電気事業者のあいだで個別契約を締結した場合には、両社間で電力のやりとりが可能だ。このほかに市場が存在しない沖縄県や全国の離島では、送配電事業者が小売電気事業者に対して電力を直接販売する。

 政府は電力市場の改革と温暖化対策の観点から、改正FIT法の施行に合わせて、再生可能エネルギーを含む「非化石電源」の電力を取引する新市場を創設する方針だ。原子力と大型水力を加えて、CO2(二酸化炭素)を排出しない電源の利用を拡大する狙いである(図12)。

図12 「非化石価値」の取引イメージ(上)、「非化石価値取引市場」の創設(下)。出典:資源エネルギー庁

 非化石電源で作った電力を証書の形で「非化石価値」として市場で取引できるようにする。小売電気事業者や発電事業者が非化石価値を購入すると、CO2排出量の削減に利用できて、CO2排出係数の低減につながる仕組みだ。一方で電力そのものは非化石価値のない状態になり、通常の市場で取り引きできる。

 現在のところ2017年度内に非化石価値取引市場を創設して、FITの対象になる再生可能エネルギーの電力から取引を開始する予定だ。このほかの原子力と大型水力は2019年度から取引できるようにする計画だが、原子力に関しては反対の声が強いため実現できない可能性がある。

 新市場を通じて再生可能エネルギーの非化石価値を売買できるようになると、その収入が国に入って、電力の利用者が負担する賦課金を減らすことができる(図13)。小売電気事業者は非化石価値を購入することで、高度化法(エネルギー供給構造高度化法)で定められた非化石電源の比率目標(2030年度に44%以上)を達成しやすくなる。

図13 「非化石価値取引市場」の創設による期待効果。出典:資源エネルギー庁

 改正FIT法と合わせて卸電力取引所の活性化を促進して、再生可能エネルギーの導入量を長期的に拡大していく。政府がCO2の削減目標を国際公約した2030年に向けて、欧米の先進国よりも低い再生可能エネルギーの比率を2倍に高めなくてはならない(図14)。改正FIT法の成功が大きなカギを握っている。

図14 再生可能エネルギーによる発電比率の比較(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

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