省エネと換気性能を両立、清水建設がクリーンルームの新型空調省エネビル

清水建設はこのほど、クリーンルームの生産効率向上と省エネルギーに寄与することを目的に、換気性能に優れる置換空調技術を応用した「置換クリーン空調」を開発した。室内全体の空気を攪拌(かくはん)する従来の空調システムと比べ、循環風量を約30%削減し、大幅な省エネが見込めるという。

» 2017年01月30日 06時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 清水建設はこのほど、クリーンルームの生産効率向上と省エネルギーに寄与することを目的に、換気性能に優れる置換空調技術を応用した「置換クリーン空調」を開発した。清浄冷気をクリーンルームの床面に向って吹き出し、生産装置などの内部発熱により温まった室内空気と置換することで、室内空調と作業エリアの清浄化を行う。

 同システムの最大の特徴は、クリーンルームの天井部に空調設備を設置する必要がないため、既存クリーンルームの階高を最大限活用でき、生産効率が高いより大型の生産装置の導入が可能になるところにある。また、少ない循環風量で確実に換気できるため、省エネ効果も大きい。なお、同システムの適用対象は、要求清浄度が比較的低い電子デバイス工場などのクリーンルームに限る。

 電子デバイス業界では、製品サイクルの短期化に伴い、製造ライン更新に要するリードタイムをいかに短縮化するかが大きな課題となっている。一方、生産効率を高めるため、クリーンルームに導入する生産装置は徐々に大型化しており、天井部に設置した空調設備が妨げとなり、新たな生産装置を導入できないケースもみられる。その場合、新たなクリーンルームを建設することになるが、設備稼働の遅れにより、事業機会を逸する可能性も出てくる。そこで同社は、天井部の空間を最大限活用でき、また省エネ性にも優れた新たな空調システムとして、置換クリーン空調を開発した。

開発した置換クリーン空調システムのイメージ 出典:清水建設

 同システムでは、クリーンルームの壁面下部に清浄冷気の吹き出し口、壁面上部に室内空気の排出口を設ける。そのため、天井面に空調設備が不要になることから、階高を変えずに、天井の有効高さを最低でも1メートル程度高くすることができる。

 また、吹き出し口から床面に向かって微風速で供給される清浄冷気は、室内空気との比重差により空間下部から溜まって温度成層を形成するため、空調領域を床面から2メートル程度の高さまでの作業エリアに限定することが可能だ。

 さらに、生産装置や人が発する熱によって温まった室内空気は、上昇気流を形成して作業エリアに浮遊する微小粒子を空間上部に搬送し、排出口から排気される。このため、天井部から清浄冷気を吹き出し室内全体の空気を攪拌(かくはん)する従来の空調システムと比べ、循環風量を約30%削減できる。

 同システムを既存クリーンルームの他、クリーンルームの新設時に適用することで、階高を抑えたローコストな施設を提供することが可能となる。清水建設は今後、既存クリーンルームの改修および新築案件への適用を目指し、提案活動を進めていく考えだ。

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