翼が円柱、新原理で中小型風車を革新蓄電・発電機器(2/4 ページ)

» 2017年01月30日 14時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

カルマン渦を抑制する研究から生まれた

 高橋氏の専門は粘性が高い非ニュートン液体であり、風車は専門外だったのだという。

 1990年ごろから、カルマン渦による励振を止める方法を考えはじめたことが、第一のきっかけとなった。カルマン渦とは流れの中に物体を置いたとき、後方に生じる渦の列をいう。橋の橋脚や煙突、電線などで起こる日常的な現象だ。橋では水の渦、煙突では煙の渦、電線では渦が起こすうなり音としてカルマン渦を認識できる。

 水平の棒を流水中に置いた場合もカルマン渦が生じる。その結果、棒に振動が生じる。これが励振だ。

 あるとき、水平の棒のごく近い位置に垂直の棒を置くとカルマン渦が止まった。2001年には、3次元形状の縦渦が励振を止めていることを発表。この現象を応用した縦渦励振発電技術を開発した。

 2014年には、この原理が風車に応用できることに着目。円柱翼風車の研究が本格化したのだという。

風車が利用する力は2つ

 円柱翼風車は縦渦によって動作する。一般的な風車の動作原理とはどのような関係にあるのだろうか。

 長岡技術科学大学で産学官コーディネーターを務める岸本真一氏によれば、円柱翼風車の動作原理は、従来風車の動作理論とは全く異なるのだという。

 従来の風車では動圧によって生じる抗力(例えばカップ型風車)や揚力(一般的な風車)を回転力に変えている(図3)。

図3 風車が利用する力は大きく2つある 出典:長岡技術科学大学 高橋勉氏

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