北九州の荒波の上で洋上風力発電、自動車工場には太陽光と水素エネルギー列島2016年版(40)福岡(2/4 ページ)

» 2017年01月31日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

県内に5000カ所以上の農業用ため池

 福岡県の再生可能エネルギーの導入量は太陽光発電が圧倒的に多い。固定価格買取制度の認定を受けて運転を開始した太陽光発電設備は126万kW(キロワット)に達して、全国でも茨城県に次いで第2位の規模に拡大している(図5)。

図5 固定価格買取制度の認定設備(2015年11月末時点)

 新たに水上式の太陽光発電設備が農業用ため池で運転を開始した。福岡市の西部にある「蓮花寺池(れんげじいけ)」の水上に、合計で1200枚の太陽光パネルが浮かんでいる(図6)。発電能力は300kWで2016年7月に稼働した。太陽光パネルを設置するフロートには高密度ポリエチレン製を採用している。

図6 農業用ため池に導入した水上式の太陽光発電設備(画像をクリックすると拡大)。出典:福岡市農林水産局

 年間の発電量は30万kWhを想定している。一般家庭の83世帯分に相当する。公募で選ばれた地元の太陽光発電事業者が建設・運営する方式で、福岡市には池の賃貸料が入る仕組みだ。固定価格買取制度の対象になる20年間に約700万円の賃貸収入を見込んでいる。市内に再生可能エネルギーの電力を増やしながら、ため池などの農業用施設の維持管理費に役立てる。

 ため池に太陽光発電を導入するにあたって、ユニークな設備構成を採用した。水上の太陽光パネル1枚ごとに超小型のパワーコンディショナー(パワコン)を1台ずつ設置する方法だ。太陽光パネルで発電した電力を水上のパワコンで直流から交流に変換して陸上の受電設備に送る(図7)。もし水上に浮かべた太陽光パネルの一部に故障が発生しても、ほかの太陽光パネルは影響を受けずに独立して電力を供給できる。

図7 太陽光発電設備の全景。階段の下に受電設備がある。出典:福岡市農林水産局

 福岡県内には農業用ため池が5000カ所以上あって、九州の7県の中で最も多い。水上式の太陽光発電設備が稼働した蓮花寺池より面積が大きい池はたくさんある。今後も同様の方法で農業用ため池に太陽光発電を導入できる可能性が広がっていく(図8)。

図8 太陽光発電設備を導入する以前の蓮花寺池(上)、導入後のイメージ(下)。出典:NEP JAPAN

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