12の予測は光と影、2035年のエネルギー(1)自然エネルギー(3/4 ページ)

» 2017年02月03日 09時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

石油需要は伸びが鈍化

  • 【予測5】石油需要は引き続き伸びるものの、伸び率は落ちる

 2035年に至っても石油は最も利用量の多いエネルギー源だ。1日当たりの世界需要は1500万バレル(15Mb/d)増加して、1億1000万バレルに達する。増加分のうち、約5割を中国とインドが占める(図7)。残りの5割をこの2カ国以外の新興国が占める。

図7 石油需給の変化 OECDの需要減と中国の需要増がほぼ等しい(左)、需要増に答えるのはOPEC諸国だ(右) 出典:BP Energy Outlook 2017 edition
  • 【予測6】石油需要に比べて供給余力が大きいため、低コストで供給可能な中東の比重が高まる

 2015年時点で石油を供給する潜在能力は、需要を上回っている(需要増に応えられる状態を維持する)。2015年から2035年、さらに2050年まで予測の範囲を広げたとしても、技術的に採掘可能な埋蔵量に対し、累積需要量はその約半分に至るだけだ。中東とCISの埋蔵量だけで足りてしまう。

 2035年には、供給が1日当たり1300万バレル増加。OPEC(石油輸出国機構)加盟国の伸びが、増加分の70%、900万バレルを占め、供給力は4800万バレルに達する。シェアに換算すると70%近い。非OPEC諸国では米国(400万バレル)、次いでブラジル(200万バレル)の供給増が目立つ。

  • 【予測7】電気自動車の比重が増し、交通革命が起こることで石油需要はほとんど伸びない

 2035年に輸送部門(自動車、トラック、船舶、鉄道、航空機)が消費する石油は、全石油消費量の約60%を占める。つまり輸送部門の動向、中でも自動車とトラックの動向が石油需要全体を左右する。

 自動車市場は成長を続け、2035年には保有台数が18億台へと倍増する。ただし、成長するのはほぼ新興国市場(Non-OECD)に限られる(図8)。

 台数が倍増する中、液体燃料需要の伸びは低い。1日当たり1900万バレル(2015年)から、2300万バレル(2035年)への増加にとどまる。これは走行に伴う需要増(2300万バレル)を差し引く技術改善が3つあるからだ。最大の削減要因は燃料利用効率の改善(−1700万バレル)、次いで電気自動車の導入(ー120万バレル)、天然ガス自動車の導入(−20万バレル)だ。

 プラグインハイブリッド車を含む電気自動車は2015年の120万台から、2035年に1億台に達し、全保有台数の6%を占めると予測した。

 このように輸送部門では石油需要はあまり伸びなくなる。2035年の成長頭は非燃料用途なのだという。プラスチックや布の原料として石油を使う。

図8 自動車市場の成長と自動車用蓄電池の価格水準 成長するのは新興国市場(左)、2035年にはガソリン車と電気自動車がコスト上釣り合いそうだ(右)。右のグラフ中で蓄電池コストに幅があるのは、予測が困難であることを示す 出典:BP Energy Outlook 2017 edition

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