BPの予測では二酸化炭素排出量は2035年まで増加し続ける。削減どころか、2015年時点より13%も増えてしまうのだ。国際エネルギー機関(IEA)が発表した目標(IEA 450)を図5に赤線で示した*3)。IEA 450の目標を実現するには2035年の排出量を約30%、2015年時点より低減しなければならない。
多少明るい予測もある。排出量自体は減らないものの、二酸化炭素排出量の年間増加率は現在(1995〜2015年)の2.1%から、2035年には0.6%まで下がる。これは前回の予測2で触れたエネルギー原単位の低減(図5中の紫色)や、石炭以外を用いるエネルギーミックスが進むためだ。
*3) 2100年における気温上昇を産業革命以前と比較して2℃以内に抑える「パリ協定」の目標達成には、大気中の温室効果ガス(主に二酸化炭素)の濃度を450ppm以下に抑える必要がある。なお現在の二酸化炭素濃度は400ppmを超えている。
交通革命の影響とはなんだろうか。ガソリンなどの化石燃料の消費量を左右する4種類の動向をいう。電気自動車、自動運転、カーシェアリング、相乗り通勤(ride pooling)である。
ガソリン車を「電気自動車」が1億台置き換えると、石油需要は1日当たり140万バレル減る。
ガソリンを用いたとしても「自動運転車」は効率のよい走行ができる。BPはこれによって燃料利用効率(燃費)が25%改善すると仮定した。すると、自動運転車が1億台増えた場合、石油の需要は1日当たり40万バレル減る。
「カーシェアリング」は燃費向上には役立たないが、エネルギー原単位を減らす効果がある。「相乗り通勤」は、総走行距離を減らす。走行距離が10%減ると、石油需要は250万バレル減少する。
これら4つの動向は独立している。組み合わせは無限だ。そこで、Outlookでは、今後のシナリオを2種類論じた。デジタル革命が起こった場合と、電気革命が起こった場合だ。
デジタル革命が生じた場合とは、蓄電池コストがそれほど下がらず、電気自動車の普及が遅れた場合だ。そのかわり、自動運転と自動運転が盛り上げるカーシェアリング、相乗り通勤が進む(図6左)。
デジタル革命には副作用もある。自動車が使いやすくなってしまうため、利用頻度が高まり、結果的に石油消費量が全く減らないかもしれないとBPは指摘した(図6左のDemand for car travel)。
電気革命が起こった場合は逆だ。蓄電池コスト低減に伴って電気自動車が普及し、電気自動車のみに自動運転が普及した場合だ。
この場合、そもそもの前提によって自動運転による化石燃料削減は起こらない。そのかわり、カーシェアリングと相乗り通勤による化石燃料削減量は、電気自動車自体の削減量を超える。エネルギー原単位が下がるからだ。電気革命が起きた場合は、化石燃料の消費量は大きく下がるものの、発電部門の需要は増える。
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