無線充電の標準化、自動運転とも連動電気自動車

無線充電の世界標準が固まった。SAE Internationalが無線充電の相互運用性と性能を確保するテストステーションを発表、自動車と地上設備のコイル形状が異なっていたとしても高効率の充電が可能になる。出力は3.7キロワット(kW)から11kWまでの3種類だ。

» 2017年02月13日 13時30分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]

 電気自動車の充電をより快適にする技術が幾つかある。無線充電(図1)、大電力を使った急速充電、電池自体の物理的な交換だ。

 3つの技術の中でも、無線充電には幾つかの大きな利点がある。ドライバーの手動操作がほぼ不要であること、自動運転と組み合わせることで、意識せずに充電ができることだ。

図1 米Qualcommが発表した無線充電システム「Qualcomm Halo」 ドイツMercedes-Benzに採用された 出典:Qualcomm

標準化が見え、製品化ステージへ

 無線充電と自動運転、この2つの利点を満たした自動車と充電ステーションを設計、製造、普及させるためには標準化が必要だ。

 自動車や航空機関連の標準化推進団体であるSAE Internationalは、2010年から無線充電の規格「SAE J2954」を確定するための活動を進めている。2017年1月23日には、SAE J2954を用いた製品の設計開発に役立つ「無線充電テストステーション」の仕様が確定したと発表、同2月6日には技術フォーラムを開催した*1)

 2017年1月にドイツAudiで開催された標準化会議では、世界の自動車メーカーやティア1サプライヤー、技術プロバイダーが参加。SAE推奨(RP)となる「ワイヤレス電力転送(WPT)」と「自動駐車と電気自動車の充電」について合意、今回の発表となった。

 充電電力は2種類。3.7キロワット(kW、WPT1)と7.7kW(WPT2)だ。2017年内には11kW(WPT3)の標準化を確定する*2)。無線充電ステーションの仕様と、自動車側・地上装置側の検証手順は、SAE J2954推奨プラクティスとして2017年後半に公開する。SAE J2954規格自体は、実車のテストデータを反映して、2018年に発表予定だ。

*1) 自動車メーカーとしてトヨタ自動車、日産自動車などが参加、装置メーカー・技術プロバイダーとして、米Lear、米WiTricity、米Qualcommなどが発表を行った。
*2) 国内の普通充電器の電力は約3kW、急速充電器は最大50kW。

コイルの形状に依存しない

 今回の合意は何を意味するのか。自動車メーカーと地上設置用の充電装置メーカーが、複数のメーカーを相手に検証しなくても、相互接続性を確保できるということだ。このような相互接続性がなければ、自動車メーカーA用の充電装置、同B用の充電装置……というように無数の開発が必要になる。自動車メーカー側も充電装置X、充電装置Y……について検証が必要になってしまう。今回の合意により、自動車メーカーと充電器メーカーの双方の開発負担が大幅に下がる。

 無線充電テストステーションの仕様を確定するため、SAE Internationalは、2016年初頭に検証テストを実施した。検証テストでは、米エネルギー省アイダホ国立研究所とTDKが同ステーションの充電率や効率、電磁放射を調査。規制ガイドラインに合致し、消費者の期待を満たすことを確認したという。

 検証テストではコイル形状にも注力した。現在、送受電コイルの形状は複数に分かれている。一般に、送電側と受電側のコイルの形状が一致しないと効率が低下する。例えば「円形コイル」を設置した場所に、「ダブルD型コイル」を搭載した車両が到着したときが問題だ(またはその逆の場合)。

 SEA Internationalは検証結果から、両コイル間に相互運用性が確保できたこと、さらに高効率で充電できることが分かったと発表した。

 この結果、無線充電テストステーションの仕様に従っていれば、自動車メーカーはコイル形状とパワーエレクトロニクスの設計を自由に選択できる。地上側の装置を設計するメーカーにも同じメリットがある。

課金はどうなる

 SAEはJ2954の相互運用性を確保した。ただし、未解決の部分がある。課金だ。SEA Internationalは今回、ワイヤレス自動課金に向けて、特定の方式を推奨していない。将来の革新のためにオープンな状態を維持するとしている。

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