環境保全団体のWWFジャパンが2050年までに自然エネルギーを100%に高める長期シナリオを策定した。太陽光をはじめ自然エネルギーの電力・熱と水素を最大限に拡大する一方、産業分野を中心にエネルギー消費量を半減させる。理想に向けたシナリオだが、実現には課題も多い。
WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)が「脱炭素社会に向けた長期シナリオ2017」を2月16日に発表した。2050年までに自然エネルギーの比率を100%に高めることを目指したシナリオで、政府が「長期低炭素ビジョン」で掲げるCO2(二酸化炭素)の排出量80%削減よりも意欲的な目標を打ち出している。
WWFジャパンの「100%自然エネルギーシナリオ」は大胆な省エネ対策と自然エネルギー拡大策の2本柱で構成する。2050年までに1次エネルギーの需要(供給量)を2010年と比べて47%削減するのと並行して、自然エネルギーの供給量を電力と熱を合わせて約10倍に拡大させる。その結果CO2の排出量はゼロになり、そのほかの温室効果ガス(メタンなど)を加えても排出量を95%削減できるシナリオだ(図1)。
WWFジャパンは政府の長期低炭素ビジョンを自然エネルギー100%に向けた「ブリッジシナリオ」に位置づけ、2050年に達成できる最低限の目標だと主張する。ブリッジシナリオでも2050年には自然エネルギーの比率が74%まで上昇する見通しだ(図2)。
自然エネルギーを拡大させるために、太陽光と風力による発電量を大幅に伸ばす。「100%自然エネルギーシナリオ」では2050年の発電電力量に占める太陽光の比率を38%、風力の比率を19%に高める(図3)。このほかに水力・地熱・バイオマス・波力を増やして100%を目指す。
さらに天候によって発電量が変動する太陽光や風力の余剰電力を水素に変換して、工場や自動車などの熱や燃料に活用する。WWFジャパンの想定では、太陽光と風力の電力のうち約半分を水素に変換すれば、電力の需給バランスにも影響を与えない。加えてバイオマスの導入量を電力と熱の両面で拡大して、2050年に消費するエネルギーの約20%を供給できるようにする。
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