建築廃材や竹でもバイオマス発電、中小水力は全国1位エネルギー列島2016年版(43)熊本(2/3 ページ)

» 2017年02月21日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

荒廃する竹林を再生するプロジェクト

 木質バイオマス発電の取り組みは通常の木材のほかに、竹にも広がろうとしている。荒尾市の東に隣接する南関町(なんかんまち)は山に囲まれた緑の豊かな場所だ。周辺地域を含めて広大な竹林が数多くあるが、その中には放置された状態で荒廃してしまったものが少なくない。

 南関町に本社を置くバンブーマテリアルは荒廃した竹林の整備と合わせて、竹を生かした地域産業の拡大を目指す「南関モデル」を展開する計画だ(図4)。伐採した竹を余すことなく活用できるように、幹の部分だけではなくて枝葉も加工する。抗菌効果や断熱・吸音効果の高い竹で建築資材を製造するほか、竹のチップを燃料にバイオマス発電にも取り組んでいく。

図4 竹のすべてを活用する「南関モデル」。出典:バンブーマテリアル

 プロジェクトの第1弾では、竹から建築資材を製造する工場の整備から始める。南関町にある4000平方メートルの用地に、総額30億円を投じて竹専用の製材工場を建設することが決まっている(図5)。2017年10月に操業を開始する予定だ。

図5 竹製の建築資材を製造する工場の予定地。出典:バンブーマテリアル

 続く第2弾はグループ会社のバンブーエナジーが竹のチップを利用した木質バイオマス発電に着手する。現時点では計画段階にあり、発電設備の規模などを検討中だ。竹は通常の木材と成分が違うため、燃焼用のボイラーをはじめ発電設備にも改良が必要になる。

 竹を燃料に使ったバイオマス発電の商用運転は実例がなく、山口県で世界初の竹バイオマス発電所の建設が進んでいるところだ。実用化できれば全国各地で竹林の荒廃を防ぎながら、木質バイオマス発電に新たな可能性をもたらす。

 熊本県内のバイオマス発電は下水の処理場にも広がってきた。熊本市の「東部浄化センター」では2016年4月1日に、下水の汚泥処理で発生するバイオガスを燃料に使って発電を開始した(図6)。その直後の4月14日に震度6の強い地震が発生して、市内にある熊本城をはじめ甚大な被害を受けたことは記憶に新しい。

図6 「東部浄化センター」の全景。出典:熊本市上下水道局
図7 ガスエンジン発電機。出典:熊本市上下水道局

 東部浄化センターは熊本市の中心部から東へ5キロメートルほどの場所にある。地震による大きな被害をまぬがれ、発電設備を含めて通常の下水処理を継続することができた。

 バイオガス発電設備は1台の発電能力が25kW(キロワット)の小型ガスエンジン発電機16台で構成している(図7)。合わせて400kWの電力を下水の汚泥から作ったバイオガスで供給できる。

 年間の発電量は314万kWhを見込み、一般家庭の870世帯分に相当する。このうち30%を浄化センターの中で消費して、余剰分を売電する予定だ。同時にガスエンジン発電機から生まれる排熱は、下水の汚泥を発酵させる消化タンクの加温に利用して省エネに生かす(図8)。

図8 バイオガス発電の流れ。出典:熊本市上下水道局

 熊本市では2013年4月に「中部浄化センター」で初めてバイオガス発電を実施した。東部浄化センターが2カ所目になる。中部浄化センターでは1台で500kWの発電能力がある大型の発電機を使っている。全体の発電効率や運用面で小型機のほうが有利なことから、東部浄化センターでは多数の小型機を組み合わせる方式を採用した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.