電力の小売全面自由化で最大の顧客を獲得したのは東京ガスだ。2016年4月から2017年1月の10カ月間で64万件の契約を締結している。さらに都市ガスの小売全面自由化に備えて1月31日に新料金プランを追加した。電気料金のプラン名(ずっとも電気)と合わせた「ずっともガス」で、都市ガスの単価を変えずにポイント割引を拡大する(図6)。
現在のところ東京電力が都市ガスの料金プランを発表していないことから、とりあえず電力とセット割引の特典を増やして様子を見る作戦だ。対抗する東京電力は関東圏を中心に都市ガスとLP(液化石油)ガスを販売するニチガスと連携して顧客を獲得していく(図7)。ただし都市ガスの供給を開始する時期が7月にずれ込むため、当面はニチガスが前面に立って東京ガスと競争する。
ニチガスは2月20日に家庭向けの都市ガスの料金プランを新たに発表した。毎月の使用量に応じて課金する単価を東京ガスよりも一律で5%安く設定している。さらに3月末まで実施するキャンペーン割引や各種の割引を組み合わせると、標準的な家庭で最大28%も割安になる(図8)。
ただし電力とセット割引は現時点で用意していない。いずれ東京電力が都市ガスの料金プランを発表する時に、両社の割引額に差がつかないようにするためとみられる。それまでのあいだに東京ガスの動きを見ながら、電力と組み合わせたセット割引額を決めたうえで、ガス料金の単価も再値下げする可能性がある。
電力会社とガス会社の応酬は関西が最も激しい。関西電力が先陣を切って2016年末に都市ガスの料金プランを発表したことを受けて、大阪ガスが年明けの1月5日に都市ガスの単価を引き下げて対抗した。その1週間後の1月12日には関西電力が都市ガスの単価の再値下げに踏み切り、大阪ガスと比べて割安感を高める戦略に出た(図9)。
大阪ガスは電力と都市ガスの使用量が多い家庭を対象に、新たに割安なセット料金プランを打ち出した。これに対して関西電力はセット割引の比率を2%から3%に引き上げ、大阪ガスのセット割引よりも安くなるプランを提示した(図10)。年間で約3200円の差になる。
大阪ガスは今のところ静観する構えだが、顧客の動向によっては料金の再値下げを実施せざるを得ない。同様の動きは東京・中部・九州でも活発になることが想定できる。電力と都市ガスを組み合わせた価格競争は市場規模の大きい地域から全国へ広がっていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.