ハーバード大の研究チームの問題意識は、電力を蓄える電解質を改善できないかというものだ。
現在のレドックスフロー電池は、バナジウムや亜鉛、鉄などの金属イオンを用い、イオンの価数の変化を利用して電力を蓄えている。
最も優れているのはバナジウムイオンを使うタイプだ。既に10メガワット(数十メガワット時)を超えるシステムが導入されており、性能も申し分ない*4)。
ただし、DOEが考えるような非常に大規模な普及を考えたとき、課題がある。資源量だ。
資源としてアクセス可能な範囲に存在する元素の比率を数え上げると(クラーク数)、バナジウムは第23位に位置する。ジルコニウムやクロム、ストロンチウム、ニッケル、銅といった元素と同程度だ。元素の総量としては問題が少ない。
問題なのは鉱山の分布に偏りがあること。2013年時点の生産量(7万4000トン)は中国(52.7%)を筆頭にロシア、南アフリカ共和国の3カ国で全世界の99.4%に達する。埋蔵量でも同様に97.1%だ。
再生可能エネルギー由来の電力を蓄える需要が急拡大したとき、極めて大量のバナジウムが必要となり、価格が急上昇する可能性があるという。
バナジウム以外の金属には材料コストや腐食、反応速度、溶解度、エネルギー効率などに課題があるとした。
そこで、炭素や水素、窒素といったありふれた物質から作り出した有機物、金属として資源量に限界がない鉄を用いたレドックスフロー電池の研究を進めた。
*4) 国内では住友電気工業が産業用に大規模なレドックスフロー電池を販売している。北海道電力における実証実験では15MWの出力(入力)を4時間維持できる装置を用いている。
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