牛の飼育数が2万頭を超える北海道の鹿追町ではバイオガス事業が活発だ。大量の牛ふんから精製したバイオガスで日本初の水素ステーションが稼働、燃料電池で走る自動車やフォークリフトに供給を開始した。バイオガスの余剰熱を生かしてマンゴーやチョウザメの育成にも取り組んでいる。
北海道のほぼ真ん中に位置する鹿追町(しかおいちょう)が、低炭素社会に向けた農山村のモデルとして再生可能エネルギーと水素エネルギーの取り組みを加速させている。
2万頭以上の牛を飼育する酪農の町に、日本初の牛ふんから作ったCO2(二酸化炭素)フリーの水素を供給する「しかおい水素ファーム」が1月24日に開業した(図1)。
しかおい水素ファームは鹿追町が2007年に稼働させたバイオガスプラントに併設している。1時間あたり100Nm3(ノルマルリューベ)以上の水素を供給できる能力がある(図2)。燃料電池自動車で1.5台分、燃料電池フォークリフトで8台分に相当する。さらに隣接する施設ではチョウザメの養殖を実施中で、燃料電池を使って電力と熱を供給する計画だ。
鹿追町では毎日大量に発生する牛ふんを効率的に処理するために10年前からバイオガス事業に取り組んできた。牛ふんを発酵させてバイオガスを精製、それを燃料に発電して施設内で利用するほか、余剰分を固定価格買取制度で売電している。新たにバイオガスの用途を広げることを目指して、主成分のメタンガス(CH4)から水素(H2)を製造してエネルギーの地産地消を拡大していく(図3)。
環境省が推進するCO2フリー水素のサプライチェーン構築事業の一環で、産業ガス大手のエア・ウォーターなどが2019年度まで実証プロジェクトを実施する予定だ。牛ふんから作ったCO2フリーの水素は鹿追町内だけではなく、隣接する帯広市の競馬場まで運んで燃料電池で電力と温水を供給する(図4)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.