電力×エコ&ソーシャル――社会・環境貢献型電力事業3分で分かるこれからの電力業界(8)(3/4 ページ)

» 2017年03月02日 09時00分 公開
[江田健二スマートジャパン]

FITと環境価値・貢献の関係

 本連載の第1回でも説明しましたが、FIT(固定価格買取制度、Feed-in Tariff)は、再生可能エネルギーなどで発電された電力の買取価格を法律で定め、普及促進させるための助成制度のことです。

 FITの導入により買い取り価格が長期にわたって保障されるようになったため、将来的に回収できる資金が予測しやすくなり、再生可能エネルギーによる発電の事業リスクが少なくなりました。そのため金融機関からの資金調達も容易になり、結果として再生可能エネルギー発電の普及が進みました。

 再生可能エネルギーの調達をFIT経由で行うことによって、新電力会社は再生可能エネルギーを安価に調達することができるようになりました。現在、FITによる電力調達は多くの新電力会社が利用していますが、FITによる電気には、再生可能エネルギーからの電力にもかかわらず、なぜか“環境価値がない”とされています。その理由は次の通りです。

 まず、FITによる助成の原資は、電気を利用している国民全員から捻出されています。電気料金の明細に、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」という項目があるかと思いますが、それのことです。この課金は、2016年度では2.25円/Kwhとなっていますが、こういった国民からの負担により、本来は高価な再生可能エネルギーの発電所を、安価に建設・調達することが可能となっているのです。

 こうした仕組みを通して、新電力会社は国民の助力を得ることにより、再生可能エネルギーを安く調達できます。しかし、これでは高い費用をかけて自社の再生可能エネルギーによる発電所を建設した新電力会社は非常に不利です。そのため、それらの差異を明確に区別するためにも、「FITを経由して調達した電気は環境価値を持たない」という定義にしているのです。ちなみに、自社の費用負担で再エネ設備を設置するケースと分けるため、新電力会社が電源構成(どのような発電方法の電気を仕入れているか)を開示する際には、注記付きで「再エネ(FIT)」と表現するルールもあります。

 このように、FITを利用すると安く再生可能エネルギーによる電力を調達できますが、企業としては環境への貢献度を強く訴求できない、といった側面もあるのです。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.