地熱発電で使わない熱水を生かす、8600世帯分の電力を供給開始自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年03月03日 07時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]
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九州電力もバイナリー発電所を拡大中

 九州電力は滝上発電所を含めて大規模な地熱発電所を大分県と鹿児島県の5カ所で運転している(図5)。このうち最大の「八丁原発電所」と「大岳(おおたけ)発電所」に隣接する九重町内の地区の1つで、2015年にバイナリー発電所を稼働させた実績がある。

図5 九州電力の地熱発電所の所在地。出典:九州電力

 グループ会社の九電みらいエナジーが建設・運営を担当する「菅原バイナリー発電所」である(図6)。発電能力は滝上バイナリー発電所と比べて少し低い5000kWで、年間の発電量は3000万kWhを想定している。九重町が所有する地熱の生産・還元設備から蒸気と熱水の供給を受ける。ただし蒸気と熱水が従来の地熱発電では利用できない100℃前後の低温のため、バイナリー方式を採用した。

図6 「菅原バイナリー発電所」の発電設備(左)、上空から見た全景(右)。出典:九電みらいエナジー

 九電みらいエナジーは鹿児島県の指宿市にある「山川(やまがわ)発電所」の構内でもバイナリー発電所の建設工事を進めている。発電能力や年間発電量は菅原バイナリー発電所と同じ規模で、2018年2月に運転を開始する予定だ。

 いずれのバイナリー発電所も同様の設備で構成する。100℃前後の熱水から蒸気を分離して、その熱を使って沸点の低い媒体を蒸発させる仕組みだ。媒体には沸点が36℃のペンタンを利用する。蒸発したペンタンで蒸気タービンを回して発電できる(図7)。発電後のペンタンは空気で冷却して液体に戻してから循環させる。水とペンタンの2系統を組み合わせて発電することから、2種類を意味するバイナリー方式の名称が付いた。

図7 バイナリー方式による地熱発電。左側が既存の地熱発電設備、右側がバイナリー発電設備。建設中の「山川バイナリー発電所」の例。出典:九電みらいエナジー

 日本国内に数多くある火山地帯には膨大な地熱資源が存在する。ただし大半が国立・国定公園に指定されているため、地熱発電所の建設には制約がある。火山地帯の周辺には100℃前後の蒸気や熱水が湧き出る場所も多く、全国各地で温泉に利用してきた。バイナリー発電所は温泉資源を枯渇させないように注意して建設できれば、地熱発電を拡大する有効な手段になる。

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