実証事業ではソーラーシェアリングによって稲作に支障が生じないことのほかに、必要な設備を量産できた時の発電コストを27円/kWh以下に抑えることが目標になっている。27円/kWhは固定価格買取制度による2015年度の買取価格だ。実際の発電量をもとに、発電能力が50kWの設備で発電コストを試算したところ、約21円/kWhになって目標を達成できる水準になった(図11)。
さらに棚田の限られた設置スペースの中で発電効率を高める手段の1つとして、ユニークな発電方法を試した。1枚の太陽光パネルの裏側に、もう1枚の太陽光パネルを下向きに設置して棚田からの反射光でも発電する方法だ(図12)。
稲作期間中の2カ月間に発電量を測定した結果、下向きになっている裏面の太陽光パネルの発電量は上向きのパネルと比べて11.4%だった。裏面の太陽光パネルは回転式になっていて、稲作を実施しない11月から4月の6カ月間は上向きにして通常の太陽光パネルと同様に発電できる(図13)。
この回転式の太陽光パネルを全体に採用すると、棚田に3列で合計26枚ある上向きの太陽光パネルのうち、24枚の裏側に下向きのパネルを設置できる(図14)。稲作期間の5月から10月は下向きで、11月から4月は回転させて上向きで発電することによって、全体の発電量を年間に51%も増やすことが可能だ。
実証事業を担当した福永博建築研究所は2017年も「米と発電の二毛作」を続けて実用化を目指す。ワイヤー式の架台と回転式の太陽光パネルは国内特許と国際特許を出願中だ。棚田で発電した電力は現在のところ13円/kWhで九州電力に売電しているが、今後は固定価格買取制度の認定取得も検討する。現状よりも発電コストを引き下げることができれば、固定価格買取制度を利用して営農型の太陽光発電で利益を生み出せる。
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