風力発電を拡大する福島県、大型風車144基に追加で公募自然エネルギー(1/2 ページ)

風力発電に適した福島県の阿武隈エリアを対象に発電事業者の公募が始まった。山地に沿って南北45キロメートルに及ぶ広い区域が対象で、4月下旬に新規の事業者を決める予定だ。すでに対象地域では3社が仮事業者に選ばれて、合計144基の大型風車を建設する計画が進んでいる。

» 2017年03月09日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

 福島県では復興に向けた産業振興策の柱に再生可能エネルギーを据えている。国と県が連携して各種の大型プロジェクトを推進中で、その1つに阿武隈(あぶくま)エリアを対象にした風力発電の拡大計画がある。南北に山地が連なる一帯は風況に恵まれて、年間の平均風速が6.5メートル/秒を超える場所が数多く分布している(図1)。

図1 福島県内の年間平均風速と既存の風力発電所(白い線で囲んだ部分が阿武隈エリア)。黄色:年間平均風速6.5〜7.5メートル/秒、赤色:8.5メートル/秒以上。出典:福島県商工労働部

 現在は2カ所で大規模な風力発電所が稼働中だが、新たに福島県が公募を通じて発電事業者を増やす。対象の区域は南北45キロメートル、東西12キロメートルに及ぶ広い範囲だ(図2)。合計で12の市町村にまたがっている。

図2 風力発電事業の公募対象区域。出典:福島県企画調整部

 発電能力が1万kW(キロワット)以上の風力発電所を建設する場合には事前に環境影響評価の手続きを実施しなければならない。福島県は4段階に及ぶ手続きの第1段階を2016年3月に実施済みで、公募で選ばれた発電事業者は手続きを引き継いで期間を短縮できるメリットがある。これまでに3社が仮事業者に選ばれているが、引き続き事業者を増やして導入量を拡大する方針だ(図3)。

図3 仮事業者に決定している3社の計画。出典:福島県企画調整部

 公募は3月31日まで実施して、4月下旬に事業者を決定する。応募の条件は発電能力を6000kW以上で計画することだ。すでに仮事業者に決まっている3社の発電計画はいずれも6000kWを大きく上回るが、それと比べて小規模の発電計画でも受け付けて事業者数を増やす狙いがある。

 阿武隈エリアの風力発電プロジェクトは、福島第一原子力発電所の事故から復興する姿を世界にアピールする「イノベーション・コースト構想」の1つに組み込まれている。この構想では風力・小水力・バイオマス発電に加えて、高効率の石炭火力発電やCO2(二酸化炭素)フリー水素の製造・貯蔵・利用を含む最先端のエネルギー事業を展開していく(図4)。

図4 「イノベーション・コースト構想」におけるエネルギー関連プロジェクト。出典:福島県企画調整部
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