東京電力の新々事業計画、2020年代の自立を目指すも道険し電力供給サービス(2/4 ページ)

» 2017年03月24日 09時00分 公開
[石田雅也スマートジャパン]

火力発電の完全統合で中部電力と合意へ

 新々総特で推進する施策のうち、発電事業と小売事業については具体的な取り組みが始まっている。火力発電では中部電力と共同でJERAの事業を拡大中だ。すでに既存の火力発電所を除いて、燃料の開発・調達から火力発電所の新設・リプレースまで両社の事業をJERAに統合した(図4)。

図4 JERAが担当する火力発電事業の範囲(2016年7月時点)。LNG:液化天然ガス。出典:東京電力フュエル&パワー、中部電力

 既存の火力発電所もJERAに統合する方向で、東京電力フュエル&パワーと中部電力が4月中に基本合意を締結する。世界でも最大級の火力発電事業会社になるJERAがスケールメリットを生かして国内と海外の双方で競争力を発揮していく。海外の発電事業は2030年までに3倍以上の規模に拡大する計画だ(図5)。国内の火力発電事業と合わせて収益を高められる期待は大きい。

図5 JERAが目指す2030年の事業成長イメージ。出典:JERA

 火力発電事業を拡大させるために、最先端の技術を活用したプロジェクトにも取り込んでいく。三菱日立パワーシステムズと共同で、発電設備にセンサーを取り付けてインターネットによる遠隔監視サービスを展開する予定だ。センサーとインターネットを組み合わせたIoT(Internet of Things、モノのインターネット)の技術を生かして、日本国内と東南アジアの発電事業者に遠隔監視サービスを提供していく(図6)。

図6 IoTを活用した火力発電設備の遠隔監視サービス。出典:東京電力フュエル&パワー、三菱日立パワーシステムズ

 新々総特には再生可能エネルギーの発電事業の拡大策も盛り込む。東京電力グループは関東を中心に164カ所の水力発電所を運転する国内最大の水力発電事業者である。水力発電事業は持株会社の東京電力HDと送配電事業者の東京電力パワーグリッドが共同で運営してきたが、2017年4月から東京電力HDのリニューアブルパワー・カンパニー(RPC)に一本化する(図7)。水力発電の業務をRPCに集約して今後の事業拡大に備える。

図7 水力発電事業の組織改編。出典:東京電力ホールディングス、東京電力パワーグリッド

 2020年4月に実施する発送電分離に伴って、RPCは日本最大の水力発電事業者として東京電力HDから独立する可能性が大きい。一方では小売事業を担当する東京電力エナジーパートナーが水力発電100%の電気料金プランをRPCの業務集約と同時に4月1日から提供開始する。すでにソニーと三菱地所に電力を供給することが決まり、今後も利用者を増やしていく。

 水力に続いてバイオマス発電のプロジェクトにも着手した。バイオマスの分野で実績が豊富なJFEエンジニアリングと共同で、廃棄物・下水汚泥・木質バイオマスを生かして再生可能エネルギーの燃料化・発電事業を展開していく計画だ(図8)。東京電力フュエル&パワーの燃料調達や火力発電所の運営ノウハウも活用する。

図8 再生可能エネルギーと自治体向けインフラサービスの共同事業。O&M:運転・維持管理。出典:東京電力フュエル&パワー、JFEエンジニアリング

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