中国とインドが悟る、石炭に魅力なし自然エネルギー(4/4 ページ)

» 2017年03月24日 15時00分 公開
[畑陽一郎スマートジャパン]
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先進国として唯一の日本、何が?

 中国やインドの動向は必ずしも楽観視できない。経済的な状況が変化した場合、石炭火力に戻ってくる可能性があるからだ。それでも政策を打ち出して、エネルギー計画を適切に修正したことは称賛すべきだ。

 Boom and Bust 2017は、中国とインド以外の国々の動向もまとめた。準備と建設を合わせた出力、これが大きい上位30カ国のリストも示した(図4)。

図4 石炭火力発電所の出力(準備段階と建設段階)が大きな諸国 上位30カ国のうち、図3に示した中国とインドを除外した上位3位から15位の国の状況(第26位のドイツを参考例として追加した) 出典:Boom and Bust 2017に基づき本誌が作図

 図4では、これから立ち上がる量(濃い灰色で示した準備と赤色で示した建設中)と、延期(緑色)の量に注目して欲しい。

 Boom and Bust 2017の指摘は手厳しい。日本と韓国、インドネシア、ベトナム、トルコを再生可能エネルギーの開発に失敗した国々と指摘している。汚染度の高い新型の石炭火力発電所の建設と計画にこだわっているからだ。

 図4に戻ろう。トルコやインドネシア、ベトナムは準備・建設中が多いものの、延期すべきものは延期していることが分かる。これはその他の国にも当てはまる。

 この傾向に当てはまらない国が1カ国だけある。日本だ。エネルギー政策が硬直的だと批判を浴びる理由だ。

 Boom and Bust 2017では「TEN HOT SPOT」として、課題がある10カ国を取り上げている。日本に関する記述はこうだ*6)

 石炭火力発電所から転換するというOECD諸国に共通する方針に例外がある。日本だ。開発中の発電所が多い。過去5年間に建設した出力は1950MWにとどまるが、現在4256MWを建設しており、計画段階に17343MWが控えている。気候変動対策への公約を果たすよう、日本は国内外から強い圧力を受けている。2017年1月、赤穂発電所(兵庫県赤穂市、関西電力)を石炭火力に転換する計画を停止したこと、これはマイルストーンとして画期的だ。

 延期についてはわずか1つの事例しかないと指摘された形だ。赤穂発電所については、本誌の記事を参照して欲しい(関連記事)。

 他のOECD諸国はどのような状況にあるのだろうか。開発を抑制することはもちろん、欧州連合(EU)と米国を中心に過去2年間で64GWの石炭火力発電所を廃止した。これは今回中国とインドが抑制した68GWに並ぶ数字だ。

 GreenpeaceのMyllyvirta氏は発表資料の中で次のように述べている。「旧式の石炭火力発電所の閉鎖は米国と英国で進んでいる。ベルギーとカナダのオンタリオ州は完全に石炭を廃止し、G8のうち3カ国は石炭を段階的に廃止する期限を発表した」*7)

*6) 10カ国の中には日本以外にも先進国が含まれている。韓国だ。韓国では世界最大の石炭火力発電所(唐津火力発電所:6040MW)を運転中。2016年7月、政府は2025年までに10カ所を閉鎖すると発表している。
*7) 関連記事:石炭火力「全廃」へ、英国・フランス・カナダ

気候変動抑制には3つの方針で

 End Coalに協力するCoalSwarmとSierra Club、Greenpeaceが石炭火力発電所の抑制にこだわった理由は、地球温暖化の抑制に役立つからだ。

 石炭火力発電所の新設を抑制し、古い設備を廃止することで、平均気温の上昇を2℃以下に保つ可能性が生まれたと指摘している。複数のシナリオを提示し、可能性の程度を見積もった。

 石炭火力発電に関して、2℃以下を実現するためには以下の3つの方策が役立つと、Boom and Bust 2017はまとめている。

 第一に中国とインドが延期した計画を再開しないように促すこと、第二に10カ国を含む他の国々が新設を抑制し、電力需要の増加には再生可能エネルギーで対応することだ。

 第三に日本を含むOECD諸国の努力が必要だ。旧式の石炭火力発電所をクリーンエネルギーで素早く置き換えなければならないと指摘した。

【修正履歴】p.1にあった「これ以上の石炭工場の建設を」という箇所を「これ以上の石炭火力発電所の建設を」に修正しました(2017年4月4日)。



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