下水処理場の地域バイオマス利活用マニュアル、国交省が策定自然エネルギー(2/2 ページ)

» 2017年04月05日 09時00分 公開
[庄司智昭スマートジャパン]
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下水エネルギー化率は約15%

 下水道事業に伴う温室効果ガス排出量は、2013年度で約632万t-CO2と地方公共団体の事業活動の中でも大きな割合を占めている。2015年度末時点の下水道処理人口普及率は77.8%を超え、高度処理の進展もあり、下水汚泥として回収される固形物量は増加傾向にある。下水汚泥中の固形物の約80%は有機物で占められており、バイオガスや固形燃料などによるエネルギーとして活用が可能だ。下水処理に多くのエネルギーを必要としている中で、下水汚泥をエネルギー源として活用していく意義は大きいとする。

下水汚泥の利用状況 (クリックで拡大) 出典:国土交通省

 下水汚泥のリサイクル率は、80%近くに達するまで取り組みは進展したが、建築資材利用といったマテリアル利用が中心となっている。バイオマスとしての特徴を生かした利用は少なく、国土交通省は「下水汚泥の資源的価値を再確認し、エネルギー的資源と生物活性利用資材としての有効利用に取り組む必要がある」とコメントする。

下水道における資源、エネルギー利用の現状 (クリックで拡大) 出典:国土交通省

 下水汚泥発生量は年間で約230万t-DS、そのエネルギーポテンシャルは年間約40億kWhの発電量であり、約110万世帯の年間電力消費量に相当する。消化ガス発電は増加傾向にあるが、2014年度末における下水汚泥エネルギー化率は約15%である。また下水に流入するリンは年間約5万tで、国内の年間リン輸入量の約10%に相当する。しかし流入したリンは、コンポスト向けを中心に約10%しか有効利用できていないという。

地域バイオマス利活用事業の促進へ

 下水処理場への地域バイオマス受け入れでは、事業採算性の検討や地域バイオマスの前処理方法の違い、下水処理への影響の評価方法、関連する法手続きといった課題があるが、これらの課題への取り組みに対する情報は整理されてこなかった。

 国土交通省では、今回のマニュアル公開を通じて、地域バイオマス利活用の導入検討において必要な事項を整理することで、地方公共団体などの実務者による下水処理上を活用した地域バイオマス利活用事業の検討を促進することを狙う。

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