画像解析で杭の施工精度を向上、奥村組が実用化FM

奥村組は、高速画像解析技術を応用して基礎杭の鉛直精度を定量的にリアルタイムで把握できる杭の施工管理システムを開発した。2台のビデオカメラとタブレット型PCなどで構成されている。

» 2017年04月26日 06時00分 公開
[長町基BUILT]

ICTを活用したリアルタイムな施工管理

 奥村組は、高速画像解析技術を応用して基礎杭の鉛直精度を定量的にリアルタイムで把握できる杭の施工管理システムを開発し、実工事に適用したと発表した。

 回転バケット方式やオーガー方式の杭打ち機を用いて掘削する「先掘り式」の杭施工は、杭孔を精度よく掘削することが重要という。掘削中における杭孔の鉛直精度の確認方法としては、杭打ち機の回転軸(ロッド)をビデオカメラで撮影した映像に、設計ラインを重ねて表示し、杭打ち機のオペレーターがその映像を目視しながら掘削する方法などが提案されている。しかしオペレーターの目視だけでは、ロッドの傾きを定量的に把握することが困難な場合がある。鉛直精度にずれが生じている可能性がある場合には、掘削を中断して測量による確認や、掘り直しを行うなどの時間ロスが発生することもある。高精度で円滑な杭施工を可能とする施工管理技術が求められていた。

 今回開発したシステムは、2台のビデオカメラおよびタブレット型のメインPCなどで構成されており(図1)、杭打ち機のロッドの傾きを定量的にリアルタイムで表示すると同時に、地中の孔曲がりを推定して、修正ガイドラインを表示する機能がある。

図1:システムの全体構成 出典:奥村組

 同システムでは杭打ち機のロッドを2方向からビデオカメラで撮影し、この画像情報を「顔認証」などに用いられる技術を応用して解析することで、杭打ち機のロッドの傾斜角と掘削深度をリアルタイムで算出できる。これらの情報を基に、杭孔全体の孔曲がり推定線や曲がりを修正するための最適なロッド角度なども算出できるため、掘削機オペレーターの習熟度に左右されない高精度な施工が可能だ。情報は全てオペレーター視点に変換されており、オペレーターの操作性にも配慮しているという。

 またウェアラブル機器(スマートグラスと音声案内機器)と連動可能。基本的な情報は手元にあるタブレットPCに表示されるが(図2)、スマートグラスに情報の一部を表示させたり、ロッドの傾きが大きくなった場合に音声案内で知らせたりといった機能がある。これにより、杭打ち機の状況とタブレットPCを交互に視認するというオペレーターの負担の軽減につながる。他のタブレット端末や現場事務所などの遠隔地でも確認することができるため、施工管理の高度化・効率化も図ることができる。

図2:画面表示の例 (クリックで拡大) 出典:奥村組

 同システムを、愛媛県伊予市発注の伊予市本庁舎改築第2期工事およびUR都市機構発注の住宅建設工事で実適用したところ、課題であった掘削の中断や掘り直しなどの時間的ロスもなく、杭の鉛直精度を管理値内に抑えることができたとする。算定された孔曲がり推定線と、掘削後に孔壁測定器で計測した実際の杭孔形状とを比較した結果、実施工に十分活用できる推定精度であることが確認できたとしている。

 同システムは生産性向上に寄与するシステムであると同時に、施工状況がオペレーターだけではなく工事関係者にも情報共有がされることで、より高度な品質管理が可能となるシステムである。奥村組では、今後積極的に展開していく方針だ。

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