ガスタービンを助ける”世界初”の蓄電池、再エネ導入に役立つ蓄電・発電機器(1/2 ページ)

米カリフォルニア州で世界初の火力発電システムが稼働した。GEと同州の大手電力会社が開発した蓄電池とガスタービンを組み合わせたシステムだ。積極的な再生可能エネルギーの導入を進めるカリフォルニア州において、系統安定化にかかるコストの削減に寄与するという。

» 2017年04月27日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 再生可能エネルギーの導入に積極的な米カリフォルニア州で、蓄電池を組み合わせたガスタービンシステムが稼働を開始した。米General Electric(以下、GE)と米Southern California Edison(以下、SCE)が開発したもので、同州ノーウォークに設置した。蓄電池を組み合わせたガスタービン発電機の稼働は世界初だという。

 このシステムはGEの航空宇宙向けの出力50MW(メガワット)のガスタービン発電機「LM6000」に、出力10MW、蓄電容量43MWh(メガワット時)のリチウムイオン蓄電池を組み合わせている。

ガスタービンシステム(クリックで拡大) 出典:SCE
併設した蓄電池システム(クリックで拡大) 出典:SCE

 ガスタービン発電機と蓄電池を組み合わせる理由はどこにあるのか。その背景にあるのがカリフォルニア州で再生可能エネルギーの導入が進んでいるという点がある。同州は2020年までに州内の電力販売量の33%を再生可能エネルギーで賄う計画で、さらに2050年にはこれを50%までに引き上げる目標を掲げるなど、米国内でも積極的な環境政策を推進している。

 カリフォルニア州は2002年に「再生可能エネルギー導入割当制度(RPS)」という制度を導入し、州内の電力小売事業者に一定割合の再生可能エネルギーの調達を義務付けている。こうした政策に伴い、再生可能エネルギーの導入が進んだ際に懸念されるのが電力網の安定化だ。再生可能エネルギーの導入拡大とともにその出力変動を吸収できるシステムを構築していく必要がある。

 今回GEとSCEが導入した蓄電池を組み合わせたガスタービンシステムは、こうした背景のもとで開発された。電力会社は再生可能エネルギー電源の発電量の増減に合わせて、火力発電所の出力を調整し、電力網の需要と供給のバランスを一致させている。しかし火力発電所の出力を、停止状態からただちに定格出力まで引き上げるのは難しい。そこでSCEなどの電力会社は急な再生可能エネルギー電源の出力変動に備えるため、火力発電所を完全に停止させず、待機状態で運転を行っていた。つまり、わずかながらも常に燃料を消費し続けている状態だ。

 こうした状況の解消を目的に開発したのが、蓄電池とガスタービンのハイブリッドシステムだ。蓄電池とガスタービンを連動させる制御システムにより、電力需要が急増したときにはすぐに蓄電池から放電を行う仕組みになっている。蓄電池を利用してガスタービン発電機の出力が高まるまでの時間を稼げるようにする狙いだ。これにより、ガスタービン発電機を常に待機状態にしておく必要がなくなる。蓄電池のエネルギー貯蔵容量は、ガスタービンが始動してから十分な出力に達するまでの時間を提供できるよう、特別に設計されているという。

 SCEによれば、蓄電池の導入によってガスタービン発電機を再始動させる回数は半分に減らせる見込みで、これにより温室効果ガス排出量を最大60%削減できるという。再起動の回数が減れば、機器の寿命が延び、運用コストも下がる。その結果、送配電コストの低減につながるメリットもあるとしている。

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