太陽光だけで成層圏まで有人飛行、初フライトに成功太陽光(1/2 ページ)

スイスで太陽光発電によるエネルギーだけで、成層圏までの有人飛行を目指すプロジェクト「SolarStratos」が進行中だ。2017年5月5日には実現への第一歩となるテストフライトに成功。2018年に成層圏へのフライトを行う計画だ。

» 2017年05月09日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 太陽光発電のエネルギーだけで駆動する有人飛行機を利用し、成層圏を目指すーー。成功すれば世界初となるユニークなプロジェクトがスイスで進行中だ。

 プロジェクト名は「SolarStratos(ソーラー・ストラトス)」。スイスの冒険家であるRaphael Domjan(ラファエル・ドムヤン)氏が2016年12月に発表したもので、太陽光だけで飛ぶ有人飛行機で高度2万5000mの成層圏に到達するのが目標だ。2017年5月5日(現地時間)に、プロジェクト実現への第一歩となる試験飛行に成功した。

試験飛行の様子(クリックで拡大) 出典:SolarStratos

 ソーラー・ストラトスは全長8.5m、翼長24.9m、重量450kg、2人乗りのプロペラ機で成層圏を目指す。主翼や尾翼には合計22m2の太陽光パネルを搭載している。変換効率は22〜24%で、発電した電力は容量20kWh(キロワット時)のリチウムイオン電池に蓄電する。この電力でプロペラを回転させて飛行する仕組みだ。

主翼の表面に薄型の太陽光パネルを敷き詰めている(クリックで拡大) 出典:SolarStratos

 初のテスト飛行では、高度約300メートルを約7分間飛行することができた。2018年に成層圏への飛行を行う計画だ。成層圏を目指す際のフライト時間は、約5時間程度を想定する。これは成層圏に到達するまでに2時間、降下するのに3時間という見積もりだ。

 ソーラー・ストラトスが目指す高度2万5000mの成層圏は、気温はマイナス70℃、気圧は地上の20分の1程度と過酷な環境だ。しかし機体内部は軽量化のために加圧などは行わない。そこでパイロットは専用の宇宙服を着て飛行する。そしてこの宇宙服に必要なシステムのエネルギーもすべて太陽光発電で賄うという徹底したクリーンエネルギー・プロジェクトとなっている。なお、パイロットは宇宙服を装備するため、飛行機から降りてパラシュートを利用することはできないとしている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.