また新素材の構造を走査電子顕微鏡や透過電子顕微鏡を用いて観察したところ、ゴムにマイクロメートル寸法の銀フレークを混ぜるだけで、混ぜたフレークの約1000分の1の大きさの銀ナノ粒子が、フッ素ゴム中で合成される現象を発見したという。銀ナノ粒子のサイズや密度は、ゴムや界面活性剤の化学構造によって制御できることも示された。
金属のナノ寸法の粒子は、表面積が大きいために粒子同士がすぐ凝集してしまい、ゴムの中に均一に混ぜることができなかった。今回の研究では、マイクロメートル寸法の銀フレークとゴムを混ぜるだけで、銀ナノ粒子が自然に形成される現象を見いだし、従来の課題を解決した。さらに銀フレークは銀ナノ粒子と比較して、材料コストの約9分の1であるため、材料の大幅なコストダウンに見通しをつけることができたとする。
同研究グループは開発した伸縮性導体ペーストによる配線を活用して、圧力と温度のセンサーをテキスタイルの上に作製した。センサーは伸縮性の高いポリウタレン基材上に全て印刷プロセスで作製。シート状のセンサーは、テキスタイル用のホットメルト(熱をかけて融かし接着させる接着剤)を用いてテキスタイル基材上に転写される。
これで伸縮性のセンサーがテキスタイル上に容易に作製できるため、同研究グループは「人間やロボットの表面の情報を正確に読み取れるようになる」と語る。今後は洗濯や繰り返しの使用による耐性を検証しつつ、3年後の実用化を目指すとした。
なお今回の研究成果は、東京大学 大学院工学系研究科の松久直司氏と染谷隆夫氏、理化学研究所 創発物性科学研究センターの橋爪大輔氏、井ノ上大嗣氏らによるものである。研究に用いたフッ素ゴム「DAI-EL」は、ダイキン工業が提供した。
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