ロシアを加えた北東アジアに国際送電網を整備するインパクトは極めて大きい。それは各国の市場規模を見ればわかる。アジア・スーパーグリッドの対象に入る中国・日本・韓国・モンゴル・ロシアの5カ国を合わせると、GDP(国内総生産)と人口は全世界の20〜25%を占め、発電電力量は30〜35%にのぼる(図6)。CO2(二酸化炭素)の排出量は40%近い水準に達することから、CO2を排出しない自然エネルギーの拡大が重要な課題になっている。
これだけ規模の大きい電力市場を国際送電網でつなぐためには、各国内で電力産業の自由化が進んでいることが条件になる。実際には日本を除く中国・韓国・モンゴル・ロシアの4カ国で発送電分離(発電・小売事業と送電事業の分離・独立)が完了して、国営の送電事業者が国全体をカバーする広域ネットワークを運用している(図7)。日本でも2020年4月までに発送電分離を実施する予定で、その後に各地域の送電事業を再編・統合する動きが東京電力グループを中心に進んでいく見通しだ。
北東アジアに国際送電網を構築できると、電力の輸入と輸出が拡大していく。電力の安い国から高い国へ電力を売ることが可能になり、各国の小売価格の差が縮小する見込みだ。現在のところ日本の電力小売価格は他国と比べて圧倒的に高い。家庭向けでは韓国の約2倍、中国の約3倍、モンゴルやロシアの約4倍の水準にある(図8)。国際送電網が拡大することによって、日本の電気料金の低減が期待できる。
電力の需給面でもメリットはある。5カ国の消費電力量を月別に見ると、日本・中国・韓国では夏と冬に電力需要のピークが訪れる(図9)。一方でモンゴルとロシア(シベリアと極東地域)では需要のピークは冬だけで、日・中・韓で需要が増大する夏に電力を供給できる十分な余力がある。
加えて1日のうちで時間帯による差も見られる。電力需要が増大する冬の間、韓国では午前にピークが発生するのに対して、日本・モンゴル・ロシアでは夕方以降にピークを迎える。しかも時差によって1〜2時間のずれがあるため、都合よくピークの時間帯が重ならない。
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