自由化で先行する欧州、その後追う国内企業の動向法制度・規制(1/2 ページ)

資源エネルギー庁は、エネルギー政策の動向に関する年次報告書「2016年度エネルギー白書」を閣議決定した。その第1部 3章から自由化で先行した欧州の事例と国内の動向を紹介する。

» 2017年06月08日 07時00分 公開
[庄司智昭スマートジャパン]

自由化で先行する欧州

 電力に続くガスの小売全面自由化が2017年4月に始まり、競争が活性化するエネルギー産業。安定供給を担う主体として、事業地域の拡大や異分野への進出、新サービス創出といった総合的な対応が求められている。資源エネルギー庁は2017年6月、エネルギー政策の動向に関する年次報告書「2016年度エネルギー白書」を閣議決定した。

 その第1部 第3章には「国内外のエネルギー制度改革とエネルギー産業の動向」として、国内エネルギー産業の競争力強化の参考に欧米の事例が紹介されている。

 まずエネルギー需要の推移をみると、日本のエネルギー消費量は2005年から減少傾向にある。欧米は頭打ちだ。一方でアジアを中心とした新興国は需要が増加しており、このような需要増が見込まれる国外市場への展開が成長のカギの1つになると指摘する。

エネルギー需要の推移 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

 自由化で先行する欧州では国内外の自由化を背景に、国内市場における競争激化とリスクが高まっているが、海外市場でシェアを拡大する機会が増加しているという。例えばドイツE.ON(エーオン)は、PowerGen(パワージェン)の買収によってイギリス市場に参入したことを皮切りに、15カ国に本格参入して規模を拡大している。

 その他、スウェーデンVattenfall(バッテンフォール)やフランスEngie(エンジー)、イタリアENEL(エネル)は国外売上高比率が60%を超えている。国内はJ-POWERが約20%だが、東京電力や東京ガス、大阪ガスなどは10%以下である。

ベンチャーへの出資やM&Aも活発化

 異分野への進出も活発だ。先述したE.ONは非戦略の化学事業などを売却し、世界最大級のガス事業者Ruhrgas(ルールガス)を2013年に買収した。ノルウェーやロシアなどにもガス事業を展開し、2015年には売上高の約50%をガス事業が占めた。

 またスペインIberdrola(イベルドローラ)は再生可能エネルギー投資を拡大し、電源構成を組み替えて成長している。2007年にイギリスScottish Powerを買収。2009年には322MWの陸上風力発電施設を開所したのに加えて、フランスAreva(アレバ)とバルト海における350MWの洋上風力事業を2014年に締結した。これにより、2005年は電源構成のうち再エネが占める割合は12%だったが、2015年には32%まで拡大した。

ベンチャー投資やM&Aの動向 (クリックで拡大) 出典:資源エネルギー庁

 エネルギー白書では、新たな収益源を模索する企業の増加も指摘している。再エネや蓄電池、分散型電源の制御、ビッグデータ解析といった多様な技術を用いて実現されるため、全てを内製化するには限界がある。そこで欧米企業は、ベンチャーキャピタルへの投資やM&Aを通して、新たな技術の獲得を積極的に模索しているという。

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