住宅太陽光発電、作業時の転落事故を防ぐために太陽光(2/3 ページ)

» 2017年06月16日 09時00分 公開
[O&M Japanスマートジャパン]

落下リスクの高い屋根では「ハーネス型安全帯」を

 こうした転倒・転落事故を防止するためにさまざまな面で防止策を講じる必要がありますが、最も有効な転落防止策は「安全帯」(高所作業を行う場合に使用する命綱付きベルト)の装着です。

 落下防止用の安全帯にはさまざまな種類がありますが、作業員は前述のように屋根の上という転落リスクの高い環境で作業を行うため、一般の建築現場で使われる安全帯とは異なる、屋根上作業に適した安全帯を使用することをお勧めします。

 一般的な建築現場で使われている安全帯の多くは、安全のためにロープの長さが、一定の長さ以上は伸びない仕様になっています。しかしそうした安全帯では、屋根の上で作業するときに上手く身動きがとれません。そこで、色々なメーカーが太陽光発電の作業専用の、滑車がついていてロープが伸び縮みするタイプのものを販売しており、現在それが広く使われています。レスキュー隊員やクライミングをする人が使っている、伸縮性とクッション性を重視した「ハーネス」と同じようなタイプのものです。

安全に気を付けて作業を進める via Photo by U.S. Army Environmental Command via Visual Hunt / CC BY

 屋根の上での作業において、こうした伸び縮みするタイプの「ハーネス型安全帯」が適している理由は、単に作業がしやすいというだけではありません。ロープの長さが固定されている安全帯を腰に付けていると、もし転落した場合、落下の衝撃によるロープの締め付けで腰の骨が折れてしまうなど大怪我につながる危険性があるからです。ロープが伸び縮みすれば、そうした怪我を防ぐことができます。

「安全帯を固定する場所がない」という根本的な問題

 屋根の上の作業で「安全帯」を使用する場合に、ひとつ大きな問題があります。それは、そもそも「安全帯」の親綱を固定する(引っ掛ける)場所が屋根の上にない、ということです。ほとんどの作業者はパネルの架台に引っ掛けるなどして作業していますが、架台はもともと安全帯を引っ掛ける構造にはなっておらず、大きな負荷がかかることも想定していないので、無理に引っ掛けると架台やパネが損傷しかねません。

 屋根に安全帯の親綱を固定するための支柱や金具などを取り付ける、という方法もありますが、そのためにボルトなどで屋根に穴を開けなければならないため、多くの家主さんは嫌がります。一部のメーカーから、屋根を傷つけずに親綱を張れる機材なども販売されていますが、ややコストが高いこともあり、あまり普及はしていないようです。

 また一般的な建築現場のように「足場」を組んで作業する、という方法もありますが、やはり時間とコストかかるため、実際の作業現場ではあまりこの方法は使われていないのが実情です。

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