人工光合成でCO2をギ酸に、変換効率を2倍に向上自然エネルギー

大阪市立大学の研究グループは新しい人工補酵素を用い、光還元反応による二酸化炭素(CO2)を利用したギ酸の生成速度向上に成功した。人工光合成技術における触媒の設計・開発指針に寄与する成果だという。

» 2017年08月09日 15時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 大阪市立大学 人工光合成研究センターの天尾豊教授らの研究グループは2017年7月、ビオローゲンの化学構造にアミノ基(-NH2)を2つ導入した新たな人工補酵素を用い、光還元反応による二酸化炭素(CO2)を利用したギ酸の生成速度を向上させることに成功したと発表した。

 太陽光エネルギーと水を利用し、CO2を有用な有機物に変換する人工光合成技術。温暖化対策につながる将来の技術として、実用化に向けた研究開発が盛んに進んでいる。課題は変換効率だ。効率を高めるためには、CO2を有機分子に変換する有効な触媒の開発が重要になる。

 研究グループではこれまで、CO2をギ酸に変換する反応を促進する触媒「ギ酸脱水素酵素」の活性を高めることに成功している。ビオローゲンの化学構造にアミノ基を2つ導入した新たな分子を合成。人工補酵素として用いることで、天然の補酵素を利用した場合より活性を560倍に高めた。

光還元反応の効率化を表したグラフ。DAV(赤い棒グラフ)がアミノ基を2つ導入した新分子 出典:大阪市立大学

 今回の研究では、この人工補酵素を色素分子(水溶性ポルフィリン)とギ酸脱水素酵素とで構成されるCO2をギ酸に変換する光レドックス系に利用。その結果、1時間の可視光照射によって、従来用いられていた人工補酵素メチルビオローゲンよりもギ酸生成速度が2倍向上することを確認したという。「これまで報告されている結果の中で最高値を達成した」(大阪市立大学)としている。

 研究グループは、CO2を有機分子に変換する人工光合成技術の触媒設計・開発に寄与する成果としており、今後はさらなるギ酸生成効率向上を目指し、反応条件の検討などを進める方針だ。

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