CO2の分離・回収技術が実用化試験へ、排熱活用でコスト課題に挑むエネルギー管理

関西電力の火力発電所で、CO2の分離・回収システムの実用化試験の実施計画が決まった。国内初という固体吸収材を利用する設備で、液体のCO2吸収液を利用する手法と比較して大幅にエネルギー効率を高められるという。

» 2017年09月21日 07時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]

 CO2などの温室効果ガスの排出量が課題となっている石炭火力発電所。この課題を解決するとして期待されている、CO2の分離・回収技術の実用化が近づいてきた。

 地球環境産業技術研究機構(RITE)、川崎重工、関西電力は2017年9月19日、CO2分離・回収技術の実用化試験を実施すると発表。経済産業省の「CO2分離回収技術の研究開発事業」として実施するもので、関西電力の「舞鶴発電所」(京都府舞鶴市)の敷地内に試験設備を設置し、2019年度以降に実用化試験を行う計画だ。

 CO2分離・回収技術の課題の1つが、システムの運用に掛かるエネルギー消費量の低減だ。エネルギー消費量を抑え、コストを下げることで経済性を高める必要がある。そこでRITE、川崎重工、関西電力の3社は省エネルギー型のCO2分離・回収システムの開発に取り組んできた。

 舞鶴発電所に設置するシステムは、発電所の煙道から排出ガスを抜き取り、川崎重工が開発した「KCC移動層システム」でCO2を分離・回収する。KCC移動層システムは、CO2の分離にRITEが開発した固体吸収材を利用している。これは、吸収素材の表面に約2mmのアミンをコーティングしたもので、液体のアミン吸収液を利用する手法より、CO2の再生回収に必要な熱の温度が低いという特徴がある。これにより発電所内の低温余剰排熱を生かせるようになるため、システム全体のエネルギー効率を高められるメリットがあるという。

設置するCO2分離・回収システムのイメージ(クリックで拡大)出典:経産省

 実証設備では1日当たり40tの分離・回収を実施する。今後システムの建設を進め、実用化試験は2019年度以降に行う予定だ。なお、固体吸収材を利用したCO2の分離・回収システムの実用化試験は、国内初の試みになるとしている。

実証設備の完成イメージ 出典:経産省

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