佐賀県で起きた風車発電の火災、原因は変圧器部品の腐食か自然エネルギー(1/2 ページ)

2017年夏に佐賀県唐津市の「串崎風力発電所」で起きた火災事故について、JFEエンジニアリングが調査報告書をまとめた。原因は電蝕(しょく)による変圧器内の部品の腐食と見ているという。

» 2018年02月06日 09時00分 公開
[陰山遼将スマートジャパン]
「串崎風力発電所」 出典:JFEエンジニアリング

 JFEエンジニアリングは2018年1月、同社の子会社である鎮西ウィンドパワー(横浜市)が佐賀県唐津市で運営する「串崎風力発電所」で2017年に発生した火災事故について、原因の調査結果をまとめた報告書を公開した。2018年1月26日に経済産業省が開催した「第12回新エネルギー発電設備事故対応・構造強度WG」で公開したもので、電蝕(しょく)による部品の腐食が事故の原因と見ているという。

 串崎風力発電所は、2004年1月に運転を開始。Gamesa社製の直径40メートル、定格出力1980kW(キロワット)の風車1基を備える発電所だ。

 事故が発生したのは2017年8月21日で、その概要は以下の通り。まず、14時6分に遠隔監視により風車の停止を確認。メンテンナンス受託会社が現地へ直行し、警報解除後、14時49分に風車の稼働を再開させた。その直後、14時52分にナセル後方のトランス室付近から煙と炎が発生しているのを確認し、直ちに消防へ通報。火炎はナセル本体とブレードにまで延焼し、事故発生から約16時間後の22日の6時50分に鎮火された。

「串崎風力発電所」の発火直後と鎮火後の写真 出典:JFEエンジニアリング

 JFEエンジニアリングが原因を調査したところ、火災のきっかけとなったのはナセル後部の変圧器(トランス)のU相690V(ボルト)ヒューズにおけるアークの発生であることが分かった。

 実機調査を行ったところ、W/V/U相それぞれの690V、480Vヒューズのうち、U相690Vヒューズだけ、上部アルミバーが焼損していたという。なお、発電機やブレーキ、ギアボックス(増速機)などには機械的な故障を示す痕跡は見られなかった。

690Vヒューズの構成(左)、火災が発生しなかったV相690Vヒューズ(中央)、火災の原因となったU相690Vヒューズ(右) 出典:JFEエンジニアリング

 では、なぜU相690Vヒューズの上部アルミバーが損傷したのか。上部アルミバーは既に溶融しているため、JFEエンジニアリングでは該当するヒューズとともに、残存する下部アルミバーの分析を行い、原因の推定を行った。

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